第12章 奈落の底から
京子の目に光が戻る。心なしか身体が大きく成長したように見えた。
「陽介・・・陽介・・・」
次第にはっきりとした声になる。
「た・・・助けて・・・陽介!!!」
バリン!
俺と加賀美を隔てていた見えない壁が砕け散った。
そして、俺は元の姿、大学1年の陽介の姿を取り戻す。
俺がずいと前に出ると、加賀美が怯えたような顔で後ずさる。
「おい・・・やめろ・・・やめろ・・・」
「貴様・・・よくも・・・京子を!」
ガンと横面を殴りつける。
ーぐわぇ
妙な声を上げて、加賀美がすっ飛ぶ。
「お前が傷つけたせいで、京子がどれだけ苦しんだか!」
倒れた加賀美の腹を思いっきり踏みつける。
ーがああ
「みんながおしゃれして、化粧しているのに、こいつは自分の体を隠さなきゃならなくて!」
ガツンと顔を蹴り上げる。
ーぶぐあ
「誰にも言えなくて、ひとりで苦しんで苦しんで苦しんで、友達も作れなくて!!」
ガン!と顔を踏みつける。
ーぐうぁ・・・
「お前のせいで!!!!」
涙が止まらない。京子が背負ってきた10年以上の時を思うと、それに気づかなかった自分の情けなさを思うと・・・。
俺は加賀美に馬乗りになり、首を締めていた。
死ね・・・死ね・・・死ね!!!
目が飛び出し、唇が紫色に変色していく。
京子の中から出ていけ!!
首にかけた手にさらに力を込める。
その時、俺の手を握ったものがあった。
『それ以上はもう大丈夫ですよ』
さっきの男性の声だ。その声を聞いた瞬間、俺の意識は暗転する。