第12章 奈落の底から
もう一度立ち上がる。どん!と見えない壁を叩く。
どん!もう一回。
どん!さらに一回。
何度も、何度も、何度も、手の皮が破れ、血が飛び散っても、俺は叩き続けた。
「京子!京子!!俺だ!陽介だ!!
京子!!そんなやつ、俺がぶっ飛ばしてやる!
俺を信じろ!!
負けんじゃねえ!」
あらん限りの力で叫ぶ。
「はっはっは・・・無駄だよ・・・無駄無駄」
加賀美がそんな俺を見て、せせら笑う。
届け!届け!届けー!!
「京子!大好きだ!
俺と一緒に来い!必ず守る・・・・」
だから・・・・
応えてくれ!
「京子ぉ!!!」
両の手で見えない壁をガンガンと叩くが、びくともしない。
加賀美に凌辱され、よだれを垂らして白目をむく京子は微動だにしない・・・。
ちくしょう・・・ちくしょう・・・。
涙が出た、自分の無力さに。こんな子供の体じゃ・・・何もできない・・・。
「思い出せよ・・・」
低い声で言う。
「あ?」
様子が変わった俺の声に加賀美が反応する。
「思い出せよ・・・。
中学校の修学旅行、奈良だったよな・・・。
シカにスカート咥えられてお前泣きそうだったじゃないか。
高校の文化祭でお前はピアノを弾いたよな。前の日まで自信ないって言ってて、放課後下校ギリギリまで練習してたよな。お前、うまいのによ。
大学・・・一緒のところに行きたくて、俺が成績悪いから、勉強見てくれて、模試でE判定だったときは慰めてくれたじゃねえか。
おんなじ大学行って、それで、告白して・・・付き合えて・・・。
思い出せよ・・・。お前の幼馴染の陽介は、そんな男に負けるようなヤツかよ
俺はもう大学生だ、そんなヤツ・・・ぶん殴ってやる!」
「なんだいそりゃ・・・お前たちは小学生で、無力で、俺には逆らえないよ・・・」
加賀美が嘲るように俺を見下ろす。
「京子・・・俺を信じろ・・・お前がどこにいても・・・どんな状態でも・・・絶対に・・・絶対に・・・離れないから・・・側にいるから!」
「よう・・・くん・・・」
京子が口を開いた。かろうじて聞き取れるかどうかの声。
「信じろ・・・・俺を信じろ!」
「きょうこぉぉぉぉ!!」
俺は絶叫した。この悪夢の世界を壊さんばかりの勢いで
京子を救うために
悪夢の連鎖から救い出すために
「よう・・・すけ・・?」