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淫夢売ります

第40章   閉ざされた庭園


☆☆☆
お屋敷の中はとても広かった。両開きの扉の先には大きなフロアがあり、左右に上階に続く階段が設えてある。上を見ると見事なシャンデリアがあった。
そのフロアの奥が客を招くサロンのようになっているらしく、私はそこに通された。

「ほら、ここならお庭がよく見えるでしょ?
 ちょっと待っててね」

張り出し窓のそばに置かれた丸いテーブルに椅子が二つ据えられていた。そのひとつに私を座らせると、ユミが扉から出ていく。しばらくすると、カートにティーセットとケーキや焼き菓子を載せたケーキスタンドを載せて戻ってきた。

「ちょうどいい時間よ。お茶にしましょう」
白磁の器にうす赤の美しい水色の紅茶が注がれる。勧められるままに口にしたお菓子は、上品な甘さで口の中でほろほろほどけるように溶ける焼き菓子だった。

ユミはずっとここで一人で暮らしていたという。
現実的には不思議なことだが、ここが夢の中の世界なら、そういうこともあるかと、妙な納得の仕方をしてしまう。
ずっと一人だったから、来客が嬉しいのだそうだ。
「裕美はどこから来たの?」
「裕美はお菓子好き?」
「どんなお花が好きなの?」
色んな質問をされる。私が応えると、ユミは花がほころぶような笑顔を見せてくれる。その笑顔は私をとても幸せな気持ちにした。

「ユミは毎日何をしているの?」
こちらばかり質問攻めにあってはたまらないと思い、私はユミに聞いてみた。ユミは顎に人差し指を当てて、上目遣いに考え込む。
「物語を読んだり、お空を見たりしているかしら?」
あのお庭は?と聞くと。
「うん、ずっとあるの。ずーっと白い花が咲いている。きれいなんだけど、中には入れないの。鍵を失くしちゃったから」
「鍵?」
「うん、どこかにあると思うんだけど」
庭は特に手入れをしなくても、とても綺麗なままだという。窓は、少ししか開かないから、窓から庭に入ることもできないらしい。

最初はちょっと警戒していたユミのことも、ちょっと話す内に、随分打ち解けてきた。

柔らかそうな髪、色素の薄い皮膚、頬を赤らめて楽しそうに笑うその仕草。
繊細な指先で菓子を取り、可愛らしい桜色の唇がそれを小さくかじる。
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