第40章 閉ざされた庭園
左右の柵はそれほど高いものではないので、中を見ることができるし、なんとなれば乗り越えられる。ちらっと中を伺うと、どうやら柵の向こうは洋館の庭園のようだった。いつの間にか霧が晴れており、中がスッキリと見渡せる。
「すごい・・・」
そこには白い花が様々植わっていた。どれもが花盛りだ。
春だからだろうか?
あるものは灌木に小さな白い花がこぼれるように咲いている。
絡まったツタのそこかしこに花開いた白いクレマチスもある。
よく手入れされた庭道の脇にはアネモネやすずらん、シロツメクサ、大ぶりの百合などが咲き誇っていた。
そして、庭園の奥、屋敷に近いあたりに大きな樹が青々とした葉を茂らせていた。
あれ?
最初は特に感じなかったが、しばらく見ている内に、私はこの庭に対して強烈な違和感を覚えるようになる。なんだか不思議な庭だ。季節がバラバラ・・・とまでは言わないが、微妙に違う時期に咲く花が同時に満開になっているように見える。現実的な非現実・・・そんな印象だった。
そして、もうひとつ私の心に何か引っかかるものがあった。
私・・・ここを知っている・・・?
どこだっただろう?この庭に、ものすごく見覚えがあった。
じっと記憶を探ってみる・・・
頭の中に、断片的に浮かぶ記憶の切れ端。
フラッシュのように瞬く情景。
それをパズルのピースをかき集めるようにして、なんとか思い出そうとする。
・・・どこ?
いつのこと?
瞬間、黒い七分丈の上着に白いくまのプリント、黒のチェックのスカートを履いた7歳くらいの女の子が走っている映像が浮かぶ。
この・・・服・・・
なんか、覚えがある・・・
「うちのお庭に、なにか御用?」
考え込んでいるところに、急に後ろから声をかけられたので、私はビクッとして思わず息を詰めてしまう。
「あら・・・ごめんなさい。驚かすつもりはなかったのよ」
振り返ると、そこには綿毛のようなふわふわとしたヘアスタイルの女の子が立っていた。
「あ・・・えと・・・」
とっさになんと言っていいかわからず、言葉に詰まってしまう。
「私はユミよ、あなたは?」
その子がふわりと笑う。年の頃は私と同じくらいのように見える。20歳前後といったところだろうか?
ブラウンのシンプルなワンピースを着ており、木製のシンプルなチャームの付いたペンダントを下げていた。
