第33章 セイレーン
ああ・・・まただ、この目。この震える瞳に見つめられると、何も考えられなくなる。
今、すごく大事なことを考えていたような気がしたのに・・・。何だったか?
頭の中が白く痺れたようになる。グチュグチュと淫らに腰を振り続ける澪が送り込んでくる快感に体の芯が蕩かされる。
「帰さない・・・帰らないで・・・」
澪が囁くように、歌うように言った。
そうか・・・帰らない・・・帰れない・・・。それでも・・・いいか・・・。
完全に意志を手放そうとしたその瞬間・・・。
ボーン・ボーン・ボーン・・・・
時を告げる鐘のような音が響き渡った。この城に来て、初めてのことだった。
「何?この音・・・一体!?」
澪が警戒したようにあたりをキョロキョロと見回す。
時を告げる・・・鐘?時・・・時計・・・
時間・・・時間!!
そうだ、時間だ。30分、と青海は言っていた。
意識がはっきりと焦点を結ぶ。佳奈が・・・佳奈が囚われてしまう。
そうだ、帰らなきゃいけない、佳奈がいるところに!
澪の膣からちんこを抜き、閨の出口に走る。
「佳奈のところに行くつもり!?」
澪が絶叫する。こんな声を出すのを初めて聞いた。いつも、歌うように囁くように話す女だったのに。
「無駄ですわ!もう間に合いません。もうあと少しで30分経ちます!今頃あの子はもう、青海の性奴隷よ!」
振り返ると澪の皮膚が真っ青に変わっていた。目がまるで爬虫類のそれのように縦型の瞳になっている。
あの姿は、まさしく。
セイレーン・・・男を誘惑し、海に沈める魔女。彼女はそれそのものだった。
彼女がいうことが正しいのならば、このまま地下に降りていっても間に合わない。だったら!
「何を!?」
僕は出口とは逆に走った。そこには大きなバルコニーに通じる窓がある。バルコニーの外は断崖になっていたはず。
澪が驚嘆の声を上げる中、僕は・・・
その窓を突き破って外に身を投げたのだった。
ぎゃあああ!!!
細く長い叫び声が城中にこだました。