第4章 同じ時間を過ごす
心の重荷が、
ほんの少し軽くなったから。
⸻
しばらくして。
規則正しい寝息。
爆豪は、ちらりと横を見る。
白井は、
完全に眠っていた。
「……」
動かさないように、
姿勢を固定する。
——重てぇ。
でも、
その重さが、悪くない。
「……クソ」
小さく呟いて、
窓の外に視線を戻す。
⸻
少し離れた席。
轟は、その光景を静かに見ていた。
隣に座る。
腕を引く。
眠る。
どれも、
大げさな行為じゃない。
でも。
——選ばれている。
そう、はっきり分かる距離。
胸の奥が、
わずかに軋んだ。
「……」
今まで、
それを“気にしたこと”はなかった。
理解したつもりでいた。
尊重しているつもりだった。
でも。
——奪おうとは思わない。
——踏み込もうとも、思わない。
それでも。
「……あるんだな」
自分の中に、白井狼薇向けた想いが。
嫉妬でも、後悔でもない。
ただ、
気づいてしまったという感覚。
轟は、静かに息を吐いた。
——だからこそ、
——これ以上は、踏み込まない。
それが、自分の選択だと、
はっきり理解した。
⸻
バスは、
ゆっくりと山道を下っていく。
眠る少女の隣には、
黙って守る男。
それを、
少し離れた場所で見つめ、
自分の心に名前をつけた男。
林間合宿は、
確かに終わった。
けれど、
それぞれの中に残ったものは、
これからの日常で、
静かに形を変えていく。
この静かな余韻とともに、
林間合宿は幕を下ろす。