第3章 知られていくこと
夜の寮は、昼間よりも静かだった。
ラウンジの明かりも落ち着いていて、
時計の音だけがゆっくり流れている。
「……で、どこだ」
爆豪が、椅子を引きながら言う。
「ここ」
白井は、自分のノートを差し出した。
期末試験前。昼間の会話のあと、
爆豪の“次、俺の得意なとこなら聞け”という言葉が
頭から離れなかった。
——聞いていいんだ。
そう思ってしまった自分に、少しだけ戸惑いながら。
「判断速度と、立ち回りの最適化」
爆豪はノートを一瞥する。
「……そこか」
腰を下ろし、
自然な動作でペンを取った。
「お前、ここで一瞬考えてるだろ」
「……うん」
「考えんな。“違和感”拾った時点で、もう答え出てる」
爆豪の言葉は、いつも断定的だ。
でも、不思議と否定されている感じはしない。
「それを、後から理由付けろ。順番が逆なんだよ」
「……なるほど」
素直に頷く。
「ノート、借りるぞ」
そう言って、ページをめくった瞬間。
爆豪の指が、止まった。
ノートの端。
走り書きの、小さなメモ。
《次:勝己の得意分野は?》
「……」
一瞬、部屋の音が消えたように感じる。
「おい」
低い声。
白井が顔を上げる。
「……何?」
爆豪は、ノートの端を指で叩いた。
「これ」
白井は視線を落とし、メモに気づいて、少しだけ瞬きをした。
「あ……」
言い訳でも、誤魔化しでもなく、
ただ事実として言う。
「覚えておこうと思って」
爆豪は、言葉を失う。