第6章 揺れる日常、進む背中
放課後の教室。
A組全員が顔を合わせていた。
「よーし、文化祭の企画決めるぞー!」
芦戸が元気よく声を上げる。
「ダンスとかどう?」
「食べ物系もアリだよね!」
麗日や蛙吸が笑いながら言う。
教室は一気に賑やかになる。
いつものA組だ。
白井は、その様子を見ていた。
今までは、ここで意見を出すことはなかった。
——でも。
胸の奥に、
小さく、でも確かな考えが浮かぶ。
「……」
一度、息を吸う。
「……あの」
静かな声だった。
けれど、不思議と通った。
「狼薇?」
三奈が、すぐにこちらを見る。
「提案、してもいい?」
「もちろん!」
「聞かせて!」
返事は一斉だった。
白井は、少しだけ背筋を伸ばす。
「ヒーロー科って聞くと、強いとか、派手とか、そういうイメージが先に来ると思うの。」
教室が、自然と静まる。
「でも……」
視線を上げて続けた。
「私は、“安心できる体験”を
文化祭でやれたらいいなって思いました」
一拍。
「失敗しても、怖くなっても、
すぐ誰かが助けてくれるって分かる場所」
「ヒーロー役と、守られる役を選べる体験型のアトラクション、と」
ざわ、と空気が動く。
「つまり……」
上鳴電気が首を傾げる。
「怖くないヒーロー体験?」
「うん」
白井は頷いた。
「成功することより、
“助けてもらっていい”って"助けたい"ってみんなが思える体験」
一瞬の沈黙。