第1章 出会い
訓練場は、朝の霧がまだ残る中、調査兵団の新兵たちが立体機動装置の訓練に励んでいた。地下街からエルヴィンにスカウトされ、イザベルとファーランと共に調査兵団に加わったリヴァイは、いつものように周囲を圧倒する速さと精度で空中を舞っていた。独学で極めたその動きは、まるで重力を無視するかのように完璧で、他の兵士たちはただ呆然と見上げるしかなかった。
そんな中、一人の少女が訓練場に現れた。ユキノ・ベリスタ、18歳。王都近郊の裕福な家庭に生まれ、幼い頃から立体機動の才能を発揮していた彼女は、調査兵団の医官見習いとして配属されたばかりだった。ハンジ・ゾエとは訓練時代からの仲で、奇抜な実験に付き合わされるうちにすっかり意気投合。ハンジの巨人研究に興味を持ちながらも、彼女自身は負傷兵の治療や戦場での応急処置を専門に学んでいた。
ユキノは医官見習い用の軽装で立体機動装置を装着し、訓練に参加する。彼女の動きは、リヴァイに匹敵するほど洗練されていた。鋭い旋回、完璧な着地、ガスを無駄にしない効率的な飛行。リヴァイの視線が、初めて本気でその少女に向けられた。
「……あいつ、誰だ?」
リヴァイは低く呟き、眉を寄せた。地下街で生き抜くために磨いた自分の技術が、壁内で育ったこの少女と同等……いや、もしかすると一部で上回っているようにさえ見えた。イザベルが隣で興奮気味に叫ぶ。
「リヴァイ兄貴! あの子、すっごく上手いよ! 私たちみたいに自由に飛んでる!」
ファーランは冷静に分析しながらも、苦笑いを浮かべた。
「確かに……あの精度は脅威だな。……あれは、ただの訓練じゃない。戦場で生き残るための動きだ」
リヴァイの目に、静かな炎が灯った。ライバル心――これまで誰も感じさせたことのない感情。地下街の闇で培った自分の強さが、初めて試される気がした。
(壁育ちのガキが……俺と同じ高さまで来やがった)