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サンタクロースが遅すぎる

第2章 遅すぎるサンタクロース


呆気にとられた私は、親友の好意を無にするわけには行かないと、仕方なく展望室で待つことにした。

温かい展望室は、案外、人が少なかった。意外と穴場なのかもと思いながら、ガラスの向こうの街を見下ろした。チラチラと瞬く光が、地上に落ちた星のようだった。

その光のひとつひとつに、人がいて、生活して、話したり、歌ったり・・・
そんなふうにしているのだなと思うと、なんだかすごく不思議な気がした。

「笹塚!」

男性の声が背後から。え?と思って振り返ると、息を切らせてそこにいたのは、同じく10年来の知り合いの、智樹だった。

英子、智樹、そして私は高校が一緒。同じ吹奏楽部で特に仲が良かった。大学はバラバラだったけれども、私を含めたこの3人は、よく一緒に会うことがあった。

ああ・・・行かせるって・・・そういうことか・・・

「英子が来るかと思ったよ」

涙が溢れそうになり、やばと思って、顔を逸らす。展望台は外がよく見えるようにか、薄暗いから、わからないかもしれないけれど、泣いている情けない姿なんて見られたくなかった。

英子のやつ・・・。

智樹の私への好意には、ずっと昔から気づいていた。
でも、それ以上に英子の智樹への好意にも、私は気づいてしまっていたのだ。

英子は大事な親友だ。
それに、3人の時間を壊したくなんてなかった。

だから・・・。

「笹塚・・・いや・・・佐知!」

智樹が私の手首をぐいと掴む。そのまま身体を引き起こされてしまって・・・彼は何も言わないで、私をエレベーターまで連れて行った。

「お腹空いただろう?」

手近なビルの20階。そこにあったイタリアンレストランに入ると、メニューをぐいと突き出される。その有無を言わせない感じに、本当は聞きたいこと、言いたいことがたくさんあったけれども、何も言うことができなかった。

勧められるがままに、パスタを注文。それから赤ワイン。
食べ終わって、飲み終わって・・・私は俯いて、ポツリと言った。

「ありがとう・・・元気、出たよ。」

そう、帰らなきゃいけない。帰って、また、もとの三人に戻って・・・さ。

「・・・これで、ちゃんと帰れるよ」

ことさらに笑ってみせた。

「佐知」
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