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天狐あやかし秘譚

第88章 動如雷霆(どうじょらいてい)


ぎゅっと、クチナワは拳を握る。
あのカダマシが一瞬で捕らえられた相手に・・・俺ひとりで・・・?

この瞬間、クチナワの脳内に、言い訳の言葉が無数に湧き上がる。

最悪なのは、俺も倒され、神宝を奪われ、しかも麻衣が敵に落ちることだ
カダマシは死なない、殺されない。あいつなら一人でもなんとかする。
戦略的撤退をして、いったん応援を要請して・・・

『行けよ』

ゾクリと、背筋が震えた。
お館様の言葉を、顔を思い出す。
あの、冷たい、俺達の命なんてこれっぽっちも考えていないような目。

ダメだ・・・ここで引いたら・・・確実に殺される。

クソ、何だってんだ。
俺は、面白おかしく生きていきたかっただけなのに!
俺を無視した奴らに一泡吹かせてやろうとしただけなのに!

いつからこんな狂った世界に、狂った事に関わるようになっちまったんだ!?

「ち・・・くしょう・・・」

震える足を押さえつけながら、クチナワは折れそうになる心をなんとか奮い立たせていった。
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