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天狐あやかし秘譚

第87章 侵掠如火(しんりゃくじょか)


☆☆☆
おいおいおい・・・マジかよ。
カダマシは何してやがんだよ!
なんで、あの狐男がここにいる?
あいつはお前が引き付けておくって約束だろうがよ!

何が『俺に任せとけ、ぶち殺すからよ』だ!
お館様から捕まえて連れてこいと厳命されている女が逃げちまった。まずいぞまずいぞ・・・このままじゃ俺がお館様にぶっ殺されちまう。

さりとて、ここから離れたらあの狐男は大技ぶっ放してくるよな?

さっきの女と狐男との会話から察するに、ここにあの麻衣とかいう娘がいるから、大技を食らわさなかったのだろう。シラクモやカダマシから聞いた話では、あの狐が放つ技は、陰陽寮の陰陽助(おんみょうのすけ)もしくは陰陽頭(おんみょうのかみ)にも匹敵するといううのだから、俺が今、こっから離れるのは悪手だ。

俺が持っている蛇肩巾の能力じゃあ、あいつの本気の攻撃を防ぐことはできない・・・。

窓から下を向き、目を凝らすと、クチナワの目には、己が放った『鎌鼬』と『山颪』の群れが森の中を木々をなぎ倒しながら進んでいる様子が見て取れた。

見ては取れたのだが、戦況は全くわからない。
あれだけの数の鎌鼬と山颪に襲われて無事に済むことはないとは思うのだが、未だに追いかけっこが続いているところをみると、決定打になっていないのは明白だった。

「クソ!カダマシはどこだよ・・・!」

あまりホテルから引き離されれば、蛇肩巾で増援を送るのも難しくなる・・・。

そこまで思った時、ドン!と森に大きな雷が落ちた。

ーやられた!

咄嗟にクチナワは思う。やはりホテルから離れたところなら、被弾の心配がない分、大技を使ってくる・・・その予想通りだった。

さすがの妖怪たちでも、あれだけの火力の雷を浴びればほぼ全滅だろう。
まずい、逃げられる!

追いかけるべきか、と逡巡する。追いかけたところで、あの狐の火力に自分が敵うとは到底思えない。さりとて、女を取り戻せなければ身の破滅は免れない。そもそも、こんなふうに躊躇している間にも、お館様の取り巻き女の一人の『遠見』の力でこの状況がすでに把握されている可能性すらある。

1秒後には、胴体と首が泣き別れ、という可能性すらあるのだ。

仕方ねえ・・・。
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