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天狐あやかし秘譚

第86章 其疾如風(きしつじょふう)


☆☆☆
「いーやー!!!」

だだだ・・・・っ!
私、浦原綾音は、100メートル陸上競技選手もかくやというスピードで疾走していた。

ちょっと前まで真っ暗闇をひたすら逃げていたのだが、いつの間にやら景色が変わっていた。今や、私は見知らぬ日本家屋の部屋から部屋へ、廊下から離れへ、離から庭へとめちゃくちゃに逃げ回っているところだ。

何から?

蛇だ。あの『頭おちんぽ蛇』(仮称)の大群から私は逃げ続けているのである。夢の中のせいか、これほど自分は走れるんだ、と思うほど体力的には問題はないが、なにせ気力が限界に近づいている。いったいいつまで逃げ続ける必要があるのか、先が全くわからない。

どうやったらこの夢から覚められるのか?
手足をつねったり、飛んだり跳ねたり、思い切って頭を壁にぶつけたりなんかしたが、痛いだけで一向に夢から覚めることはできなかった。

そして、奴ら『頭おちんぽ蛇』達はにょろにょろにょろにょろ、疲れる気配もなく、追いかけてくるのである。

幸いだったのは、このアレキサンドライトの力だ。これのおかげなのか、蛇たちは私を見失ってしまいやすいようだった。そう言えば、『姿を隠す』って、日暮さん言ってたっけ?

そして、もちろん『身を守る』効果もあるわけで、2〜3回は蛇に絡まれてしまったことがあったが、アレキサンドライトをかざすとまるで十字架を突きつけられたドラキュラ伯爵のように威勢を失って退散していく。

まさに、アレキサンドライト様、様々!
もう!日暮さん、ナイスです!!

廊下からそっと障子を開き、中を伺う。
見たところ、蛇はいないようだ。ちらっと廊下を見渡すと、やはりいない。
よかった、この部屋で少し隠れていれば、休めるかも・・・

するりと中に滑り込む。さっきから走り詰めで息が切れていた。
夢の中なのに・・・。

とりあえず、囲まれさえしなければこのアレキサンドライトでなんとかなるから・・・。

私は20畳ほどの広い居間の中央に陣取り、油断なく周囲を見渡しながら少し休憩を取ることにした。どこかから蛇が湧いてきたら、さっと反対から逃げなければならないからだ。

本当に、これがなかったら今ごろ私は・・・
手のひらの上に乗っている石をしげしげ見つめる。
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