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天狐あやかし秘譚

第86章 其疾如風(きしつじょふう)


☆☆☆
光球がダリの顔面を捉えた。

勝った!

カダマシはそう思った。だが、その時、気のせいか呟くような声が聞こえた。

「・・・きことよ」

なんだ!?

ゾクリと背中が粟立った。なにか意図しないことが起こっている、そう直感した。

確かに、捉えたはずだ。あのタイミングで避けられるわけがない。
光が収束する。背後の森は超高温に灼かれ、発火することすらなく、消し炭になっていた。そして、そこには上半身が消し飛び、両の足だけが無意味に立っている、そんな狐男の無惨な姿が・・・

しかし、不意にその足の像がゆらりと陽炎のように揺らぎ、空気中に溶けるかのように消えていった。一瞬、妖怪とはこのように死ぬものなのか、と思ったが、すぐに違うと思い直す。何の痕跡も残さない、そんなはずは・・・

「あやなきことよ・・・」
「なるほど、神宝の力とはかくのごとくか」
「主の力ではないな・・・」
「手慣れたとは言い難いな・・・」

あたり一面から声がする。右から、左から、上から、後ろから、前から、四方八方から。相手はひとりのはずなのに、声の主はどう考えても複数いる。

知覚力を高める!

カダマシが、目と耳の力を高めると、その超知覚は、周囲から浮き上がるようにして存在する複数の影を捉えた。

なんだ?分裂しやがった!?

「どうした?来ぬか?」
「我から行くぞ」
「あゝ、面白き・・・面白き・・・」

影が一斉に躍りかかってくる。
しかも、その全てが超高速だ。

どう・・なっていやがる!?

一斉に四方から襲いかかる槍の穂先を常人離れした知覚力と反射神経で避けていく。
しかし、大量に発生した『ダリ』の猛攻は、カダマシのそれをしても、次第に避けきれなくなるほどの物量だった。

くそ・・・くそくそ!

こう早くちゃ技を出す暇もねえ・・・!
なんとか、この場を離れ・・・なくては!

最初に考えたのは、『大口真神』をもう一度使う方法だ。あの形態なら、一瞬の内にダリから大きく距離を取れる。しかし・・・

変形している時間がない!!

同じく『だいだらぼっち』もダメだ変形に時間がかかりすぎ、その間に首を刎ねられかねない。今のこの『童子』で凌ぐしかない。幸いなことに、敵もまたこの間のような大技を撃ってこない。

大技を撃たない?
撃たない?なんでだ?
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