第10章 迷途忘路(めいとぼうろ)
時折跳ねる腰にあわせて、嬌声が更に淫らに、湿ったものになる。
「ああ!はん♡あ!、あ!、いい!、もっと!もっと、舌入れて!グチョグチョにしてぇ!」
スカートがモゴモゴとうごめいている。
「ああああ!」
高まってきたのか、一層声が大きくなる。そのままびくんと全身がふるえ、M字に開いた太ももが痙攣するように震えているのが遠目にもわかった。
うそ・・・イッちゃったの?
ひとつ、びくんと身体を震わせると、その女性が顔をこちらに向けた。長い髪の毛が左目を隠しており、右目だけがギランと光ったような錯覚を覚える。その目が、襖から覗いている私の目と合った。
「ふふふふ・・・あなたも・・・一緒に・・・する?この子に舐めてもらうの・・・きもちいいよぉぉぉぉぉ?」
ゾクリとするような笑みを浮かべる。声は先程の嬌声とは打って変わった低い声だった。
「これ・・・とってもいいのよぉ・・・!」
片目の女性がスカートをゆっくりと捲り上げると・・・。
「っ!???」
声にならないほど驚いた。その女性の股の部分には時代劇よろしく髷を結った男性の生首が張り付いていたのだ。その生首がゆっくりとこちらを振り向く。
いやああああ!!!!
心の中では大絶叫である。振り向いた生首は右目はえぐれ、ヘビのように先の割れた舌がやたら長くベロンベロンと自分のおでこや耳を舐めている。
ばちん!と襖を閉めると、私は慌てて後ずさる。後ずさった拍子に真後ろにあった『女郎花』とあった襖を突き倒してしまう。
え?
女郎花の部屋の中も真っ暗だった。誰もいない?と思った矢先、視界の端でカサカサと動く気配を感じた。
すごく・・・嫌な予感がする。
嫌な予感がするが・・・体が動かない。ぎぎぎ・・・っと目だけをそちらに向ける。見たくないのに、目を凝らしてしまう。
最初は人、だと思った。目がなれるにつれて見えてきた。中空に薄ぼんやりと見えた人の顔。女性、だろうか。よく時代劇の女性がしているような、丸髷を結っている。うつむいているので表情はわからない。
て・・・店員さん?だよね?
この辺はもはや祈りに近い。絶対にそんなわけはない。だって、こんなに暗いところでうつむいてじっと立ってるなんて・・・。怖すぎる・・・。