第81章 奸智術数(かんちじゅっすう)
「雄一くん、意外と謎解きとか好きだから、ミステリーとか書いてみたらいいのに」
沙也加はそんなふうに言うが、登場人物の性格とか考えたり、情景描写したり、伏線はったり・・・創作は考えることが多すぎて僕には無理だと感じる。
素直にそれを告げ、沙也加はすごいなあと言うと、彼女はちょっと照れたように笑った。
「雄一くんだけだよ。すごいって言ってくれるの」
「僕にはできないもの。今書いてるやつも、もし書けたら見せてくれる?」
「うん、雄一くん、貴重な読者だし。意見もらえると嬉しいな。」
そんなことでいいなら、いくらでもやるよ、と心の中で思う。
僕は自分の文章をあまり人に見られたくない、人に評価してほしくないと思うというのに、彼女は進んでそれができる。
すごく強くて、かっこいい。
加えて、愛らしい。
そんな憧れの人が、僕の『彼女』だということを、僕はまだ信じられずにいた。
放課後の部室。
時間いっぱいまでの幸せな時。
こんな時間がいつまでも続けばいいと、心の底からそう思った。