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天狐あやかし秘譚

第70章 自縄自縛(じじょうじばく)


ところが、あにはからんや、玲子の告白は成功し、小野くんと付き合うことになった。これにプライドの高い京依の心はいたく傷ついたに違いない。自分より先に陰キャで目立たない、クラスでの序列も下である玲子が彼氏を作ってしまったのだ。この嫉妬心が最後の一押しとなり、彼女は一気に鬼と化してしまった・・・のではないかと考えたのだ。

彼女が天邪鬼だとしたら、その回向方法はひとつだけだ。
自らの歪んだ心を認めて、正直に自分の気持ちを告白すること、である。

だから、お願い・・・
気づいて・・・自分の気持ちに。

「嘘をつき続けるの、辛かったんじゃない?」

私は、なおも語りかけていった。京依はグルルルとまるで獣のような呻き声を上げ、身悶えし続けていた。
京依がちらりと私の後ろに座っている『玲子』に目をやる。

「嘘・・・嘘なんて・・・嘘なんてついてない!私、ついてない!」
大声で否定する。ぐぐっと鬼が身体に力を込める。水の鎖を引きちぎろうとしているようだ。

「海外に行った、と言っていたけど、本当に行ったの?有名人に会ったというけど、本当に会ったの?」
私の問に対して京依は歯をむき出しにする。まるで獣が威嚇するかのようだった。
「行ったもん!会ったもん!私、嘘ついてないもん!!」
束縛を破ろうと腕を大きく開こうとする。鬼の力が増しているようで、彼女の腕の動きに伴い水の鎖がギチギチと悲鳴を上げる。私は追加の呪言を奏上し、術を補強する。だが、その補強された術を破ろうと、京依は更に大きく体をねじり、大声をあげ続けた。

私は努めて落ちいた風を装い、説得を続ける。
「そう言わないと、周りの人からバカにされると思った・・・からじゃないの?
 でも大丈夫・・・」

そう、大丈夫。海外になんて行ってなくたって、有名人と知り合いじゃなくたって、霊感なんかなくたって、あなたにはいい友達がちゃんといるじゃない。

「大丈夫・・・玲ちゃんみたいな、いい友達、ちゃんと出来たじゃない」
私の言葉に反応して、ピタリと京依の動きが止まる。
「れ・・・いちゃん・・・?」

響いた。

そう、多分、先に彼氏を作られて苦しくなっちゃったけど、玲子は京依にとって大切な友達だったに違いない。
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