第67章 不立文字(ふりゅうもんじ)
『そして、清美の望みだけではなく、儂の望みまで叶えてくれるとは・・・
大谷のホームラン、この目にしっかと、焼き付けたぞ。
本当に、感謝、感謝じゃ・・・ほっーほっほっほ・・・』
すうっとえびす神が光の水脈を引き、天に昇っていく。人の縁を見、それを結ぶ日本古来の神。その姿が夜空に昇り、小さく小さくなっていく。
なかなかに感動的な幕引きだ。
「行っちゃったね・・・キラキラの神様」
「福の神とは縁起の良いものを見た!」
子どもたちは大はしゃぎだ。
まあ、なにはともあれ、色々苦労したけど、清美さんたちはこれから幸せになるというし、私も苦労した甲斐があったというものだ。
危うく東京ドームの衆人環視のもと、痴態をさらすところだったけど・・・。まあそれが貧乏神の望みだったからしょうがな・・・。
ん?
待てよ?
私はふと心に引っかかるものを感じた。
貧乏神は言っていなかっただろうか?
『それもこれも、お前さんのおかげじゃ。綾音・・・。
お前さんの優しさが清美の望みを叶えたんじゃよ。ありがとうな。ありがとう。
おかげで儂は清美から離れることができた』
んで・・・
『そして、清美の望みだけではなく、儂の望みまで叶えてくれるとは・・・』
って・・・。
も、もしかして・・・。
綿貫亭敷地内に戻ってきたダリは、リラックス狐神モードに戻っている。そんな彼をちらっと見やる。あまり、確認したくないけど、聞かずにはいられない。
「ねえ・・・ダリ・・・、もしかして、あの貧乏神、大谷の試合見なくても清美さんから離れられたとかっていうことは・・・・」
ダリがチラと斜め上に視線をそらす。
彼も、どうやら同じ結論に達していたようだった。
「綾音が・・・優しいと踏んで、ドサクサに紛れて自分の望みを言うたようじゃな・・・」
ビシ!
こめかみに青筋が走るのを感じる。
怒りがメラメラと心の内から湧き上がる。
苦労したのに!
心配したのに!
めっちゃ、恥ずかしかったのにぃ!!!!