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天狐あやかし秘譚

第62章 堅忍不撓(けんにんふとう)


「おやおや・・・随分たくさんの狐を飼いならしていらっしゃるようだ」

野づ霊が管狐を警戒して、シャーっと威嚇音を発する。四匹の管狐もそれに反応し、宙空で油断なく臨戦態勢を取っていた。

「あんた、一体・・・」
霧島は、右手で刀印を結び、油断なく私から目を離さないまま、ジリジリと距離を取ろうとする。なるほど、術もある程度使えると・・・。

「ご存知でしょう?同じクラスではないですけど」
「名前を聞いてるんじゃないわ。なんで、そんなものを・・・」

そんなもの、というのは野づ霊のことだろう。私から言わせれば、あなたの使っている管狐の方が『なんで、そんなもの』だ。まあ、おそらく霧島の家系が狐憑きなのだろうとは想像がつくが・・・。

霧島が刀印を袈裟懸けに振り下ろす。その動きに合わせ、四匹の使い魔の内、三匹が私に向かって襲いかかってきた。

「野づ霊」

私の呼び声に呼応して、野づ霊が金色の光を放つ。その光が結界壁となって私と霧島の間に立ちふさがり、管狐の突進を妨げる。壁に当たった管狐たちは、主人のもとに帰っていった。

たったワンワードで、自分の放った三匹もの使い魔が退けられたのを目の当たりにして、霧島が顔を引きつらせた。おそらく、霧島自身、自分以外の術者に出会ったことがないのだろう。未知の力を前にして、足が、手が震えているのがまるわかりだ。

「あんた、な・・・何者なの?」
「名乗ったほうがいいですか?
 宮内庁陰陽寮祭部衆、属の二位、宝生前桐人
 以降、お見知りおき・・・・はしなくていいですよ」

どうせ、全部、忘れるんですからね。
そのセリフは言わなかった。

シュン、と右手に潜ませていた石釘を霧島の前に投げつけた。
地面に投げつけた石釘が、ぶううんと音を立てて小さな土の術式を展開する。

「呪力不正行使の現行犯です。
 あなたを拘束します。霧島遼子さん」

ー石寂絶入(せきじゃくぜつにゅう)

石釘を媒介に術式が弾ける。その作用が、術者の目の前の人物の脳に作用し、その意識を奪い取る。

「があぅ!」
美しい外見に似合わない奇妙な声をあげ、霧島の目がぐりんと上転し、そのまま膝から崩れ落ちていった。
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