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天狐あやかし秘譚

第62章 堅忍不撓(けんにんふとう)


そうでなければ、式を使った人間がいる可能性があるところに、のこのこ自分の使い魔を再び放つなどということは考えられない。

素人ならば、やりようはいくらでもあります。

私は一計を案じ、その場を離れる。なるべく会場の全てを見渡せる場所。そして、舞台を正面にして、島本と距離が取れる場所に・・・。

目の前にちょうどいい人がいる。クラスも名前もわからない女性。

すいません。ちょっとだけ、びっくりさせますよ・・・。

私は左手に媒介となる石の指輪をはめ、その人の肩に手を触れ、呪言を唱える。

『土公幻燈 石鏡よ水明を隠せ』

急に肩に触れたものだから、女性が振り返り、私の方を怪訝そうに見る。
「失礼・・・肩に糸くずがついていましたので」
にこりと笑う。
「あら、ありがとう」
一応、疑いは晴れたらしい。

すいません。一瞬なので・・・。
私は女性に呪力を送る。先程の術で、脳内に少しだけ細工をさせてもらった。その細工が私の放った呪力によって動き出す。

「きゃあ!ネズミ!!」

彼女が突然、大声を上げた。周囲の人がその声に反応してざわめく。

「え?ネズミ!?」
「どこだ!」
「きゃあ!いやあ!」
「どっちいった?」

実際にはネズミはいない。先ほど私が彼女にかけたのは、土の術式によって幻を見せる術、しかもほんの一瞬だけ視覚の自由を奪う、最も簡単かつ害の少ないものだ。それにより、彼女にネズミが目の前を走る様子を見せたのだ。

私がやったことはこれだけだった。
ただ、これで十分だった。

私は、術者を特定することに成功した。
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