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天狐あやかし秘譚

第62章 堅忍不撓(けんにんふとう)


☆☆☆

「おう!宝生前!待たせちゃったか?」
あの同窓会から2週間ほどたったある日、都内にあるバーで、私は島本と待ち合わせていた。島本は今日まで東京で行われていた3日間の教員研修会に参加していたのだ。今日はその最終日だったが、明日も休みを取っており、夕方に帰れば十分とのことだったので、二人で飲みに行こうと誘ったのだ。

私から。

理由はいくつかある。
ひとつ目は・・・

私は、さり気なさを装って島本の周辺を見渡す。・・・大丈夫だ。厭魅が憑いているなどということはない。

そう、ひとつ目の理由は、こうして実際に島本が本当に呪いから逃れていたかを確かめるためだった。この点はクリアである。

そして、ふたつ目は・・・。

「別に特段、待っちゃいないさ。だいたい、そっちが終わる時間がよくわからないと言ってきたんだ。暫く待つのも計算のうちさ」
掛けろよ、とバーカウンターの自分の隣の席を勧める。島本が座ると、彼には感知できない薄ぼんやりとした青色の光がバーチェアから放たれた。

これでふたつ目の目的は達成だ。

浄化の儀式を行うこと。これがふたつ目の目的だった。あらかじめバーチェアに陣を施してあった。彼が座った際に、そこに込められた力を解き放ったわけだ。これで、仮に体内に邪気が残存していても、それは大分打ち払われたはずだ。

そして、最後の理由。
「どうだい?最近・・・」

近況を聞くことによって、同窓会のときに行った『祓え』の成果を確認したかった。

島本が若干顔をほころばせる。
「お前が言う通り、あの時はあんまり調子よくなかったんだけどさ。
 今は、大分良くなったよ・・・
 それに・・・」
なんだから嬉しそうに、杯を傾ける。琥珀色のバーボン、ロックだ。

その顔で、大体察しがついた。
私の『祓え』は、うまくいったようだった。
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