第61章 辺幅修飾(へんぷくしゅうしょく)
土御門様の使う十二天将には遠く及ばないが、多少の範囲を独自に移動し、情報の収拾や呪力の運搬、視覚共有などが可能だ。あまり強くないが、土の術式を用いての防御や攻撃に使えなくもない。
もちろん、素人が使う管狐の捕獲くらいならわけない。
管狐と同じく、野づ霊も普通の人の目に映ることはない。ぽたりと床に落ちた野づ霊はシュルシュルと蛇行しながら島本に近づいていく。管狐は島本の肩口に乗ったまま舞台の方をじっと見つめていた。
まさか、ビンゴの行方に興味があるわけじゃないでしょうけどね。
今が・・・チャンスです。
「はーい!次は57番です!」
舞台上では霧島が次々とビンゴマシーンから数字の玉を取り出していた。野づ霊がついに島本の足元に到達する。そのまま不可知のヘビは島本の足をスルスルと這い上がっていく。
よし・・・もう少しだ。
背中を這い上がり、そこから二の腕にわたる。上腕のあたりにくるりと巻き付き、肩口で、なおもじっと舞台上を見つめている管狐に向かって鎌首を持ち上げた。
野づ霊の顎が管狐を捉えようとしたその時・・・
っ!?
するりと管狐はその顎を躱し、肩を蹴って宙空に舞った。
そして、そのまますーっと空間に溶けるように消えていった。
誰かが管狐を呼び戻した!?
馬鹿な・・・
「はーい!22番!・・・あ!リーチですか!?では、前に出てきてください!」
私の驚きとは無関係に舞台上ではビンゴゲームが進行していた。
こんなジャストタイミングで呼び戻すなど、実際に目視でもしていない限りは・・・
そこまで考えて私ははたと気づき、周囲を見渡した。
術者が・・・この会場にいる・・・ということか?
この旧友の中に、島本を呪うために使い魔を放った人間がいる。
一体、誰が?
島本に悪意を持っている人間が、全く見ず知らずの人ではない、という事実が、私の背筋をゾクリと冷たくした。