• テキストサイズ

天狐あやかし秘譚

第61章 辺幅修飾(へんぷくしゅうしょく)


そして、この顔は・・・?

「ああ・・・霧島さん」
「うれしい、私のこと覚えていてくれたんだ!」

そうですね、あなたのことは、別の意味で忘れないです。
霧島遼子さん・・・。

あの時、島本にチョコを渡した女性。その後、島本と付き合った、というところまでは聞いたけど、結末を見届けることはなかった。

あの高2のバレンタインから、島本と私の間には微妙な距離感が生まれてしまった。正確に言えば、島本自身は別に何ら変わることはなかった。私が、彼を避けたのだ。

『今度、彼女と遊園地に行くんだ』
『わりい、今日は、彼女と図書館で勉強するって』
『週末か・・・彼女どうかな?』

事あるごとに目に映る、耳に障る『彼女』という言葉。
それに、私は耐えることができなかった。

そして、そのまま高3の夏休みが過ぎ、文理でクラスが別れてからはなおさら交流がなくなった。彼は地元の大学に進学し、私は東京の大学を選んだ。

彼女と島本が、どうなったのか・・・、私はそれを知ろうともしなかった。

そう、私は逃げたのだ。

今、その、当の霧島遼子自身が目の前にいる。踵を返して逃げたい衝動に駆られるが、そういうわけにはいかない。そうなると今度は、職業病でつい、観察してしまう。プラチナ製だろうか、白銀に輝く長さの違うスティックが4本、楽器のウィンドチャイムのように下がっている大振りなイヤリングが目に付く。髪は少し茶がかかっていて、ふんわりとしたハーフアップに仕上げている。そして、目を強調するようなメイク。
嫌味ではないが、なんとなく派手な印象は否めない。
・・・左手に指輪はなかった。
『霧島』と呼んでも、それを訂正しなかったところを見ると、独身なのだろうと、推測できた。

そんな事を考えて少しホッとしている自分が、とても嫌になってしまう。
霧島遼子が結婚していないからと言って、島本がどういう状態か、なんてわからないではないか。

霧島は一通り社交辞令的に話をしていくと、すぐに私の傍を去っていった。少し観察してると、輸入雑貨か何かを扱っている小さい会社を経営しているようで、その経営にプラスになるような人脈を探しているらしかった。あちこち声をかけて、仕事を聞いては、役立つと思った人に名刺を配っていた。
/ 748ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp