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天狐あやかし秘譚

第57章 猪突猛進(ちょとつもうしん)


先程のきつい抱擁がやや照れくさかったのは、ダリも同じだったようで、彼は今、明後日の方向を向いている。でも、その尻尾がぴるん、ぴるんと跳ねていて、心の内が丸わかりだ。

もし、ダリがその超妖力であの場で即、治療を施していなかったら、
もし、疫病除けの護符を身につけていなかったら、
おそらく生命はなかっただろう、と。

「綾音さん・・・無謀にもほどがあります・・・。
 助かったのは、奇跡ですよ・・・」

「ごめんなさい・・・」
色んな人に心配をかけてしまった。・・・急速に心苦しくなってきた。

「まあ、助かったんやし、ええやないの。
 瀬良ちゃんも怖い顔しないしない!
 あ、そうそう、多分な、綾音はんが助かった理由
 もう一個あんねんで」
土御門が言う。
「もうひとつって?」
「ああ、あの疱瘡神な、多分、途中でちょっと瘴気を引っ込めた・・・思うんよ」
きっと、綾音はんの声、届いてたんとちゃうかな・・・
土御門は、そう言ってくれた。

あれ?そういえば、真白さん・・・。
「ダリ・・・真白さんと颯馬さんは?」

やっとなんとか立ち上がれるようになり、辺りをうかがった。今、私達がいるのは、先ほどまで戦いが繰り広げられていたところのすぐ近くのようだ。

真白も、颯馬も周囲には見当たらない。
もしかして・・・?

「ああ・・・あの者たちか・・・」
不穏な予感が胸をよぎった。やっと少し機嫌を直してくれたダリが、私の手を引いてくれる。ダリに連れられて、木立を抜ける。
そこにあったのは・・・。

「これ・・・って・・・」

夕日のオレンジに満たされた空間。
木々が吹き飛ばされ、円形に平地になった場所の中央に、それはあった。

巨大な水晶の柱だった。
キラキラと輝く水の結晶のようなそれの中に・・・

「真白さん・・・颯馬さん・・・」

服が引き裂かれ、ほぼ半裸姿をした真白と、颯馬が互いに慈しむように抱き合っていた。

「土御門が封印をした・・・男の方は、自分でその封印に飛び込んでいった」
ダリが二人を見上げて言った。

「真白さんの姿が・・・」
真白の姿は、多少皮膚に爛れは残っているが、ほとんどもとの人間の姿に戻っていた。美しい顔立ち、透き通るような肌と漆黒の髪。豊かな髪がまるで水の中を漂うように水晶の中に封じられていた。
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