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天狐あやかし秘譚

第57章 猪突猛進(ちょとつもうしん)


☆☆☆
目が、開いた。
その目に最初に写ったのは、冬晴れた夕焼けの空だった。
薄い雲が夕日に照らされ、オレンジにたなびいている。

私・・・どうしたんだっけ?

そうだ、私、颯馬を助けようとして、真白に体当りして、それで、ダリに助けられて・・・。気絶・・・していた?
一体、戦いはどうなったの?

体に力を入れて起き上がろうとするが、どうにも力が入らなかった。
まだ、疱瘡神の病に侵された余韻が残っているのだろうか?

「・・・大丈夫・・・なのか?」

視界にダリの顔が割り入って、心配げに見下ろして来る。
どうやら私は、またしてもダリの膝枕で寝ていたようだった。

「どこか具合の悪いところはありませんか?」
左の方から、聞こえるのは、瀬良の声だ。
「自分、名前言えるか?」
ダリの背中側から聞こえる声。これは土御門だ。

「・・・・綾音・・・浦原綾音・・・」
答えると、やおらダリがぎゅうっと私を抱きしめてきた。

え?ちょ・・・何?何?!
名前、言っただけなのに?

「痴れ者が・・・」
きつく、きつく抱きしめられる。
よくわからないけど、ものすごく心配させたらしいことはわかった。

「ちょ・・・ちょっと・・・ダリ・・・」
やっと周囲を見る余裕が出てきた。瀬良も、土御門もいる。
現場処理のためだろうか、見覚えのない人達もいる。おそらく陰陽寮の職員だろうと思われた。

そんな公衆の面前で抱きしめられているのが、ちょっと、恥ずかしかった。

「綾音さん・・・よかった・・・」
「天狐はんに感謝やな」

瀬良と土御門が口々に安堵の声を漏らす。
一体どういうことなのか・・・?
やっと、ダリの抱擁から解放された私に、瀬良が説明してくれた。

どうやら、先程まで私は、赤咬病のフェーズ4、衰弱段階に至っていたという。しかもその中でもかなり進行していたのだという。進行具合から言って、脳機能障害が起きててもおかしくないほどの病状だった、というのだ。

ダリが、心做しか憮然としているように見えるのは、それが原因のようだ。
必死に私の治療をしてくれたと、瀬良は言っていた。

『あないな天狐はん、初めて見たわ』
土御門も、異口同音に言う。
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