第57章 猪突猛進(ちょとつもうしん)
『真白さん!・・・分かって!私は!私は颯馬さんを傷つけようとしていないの!あなたが、守ろうとしている颯馬さんは、そのままだと死んでしまう!』
ああ・・・綾音に言われるまで気づかなかった。
疱瘡神は、真白は、颯馬を守ろうとしている。あんな姿になってしまっても、彼女にはまだ人間の心が残っているのだ。
あれは、疱瘡神100%の力じゃなかったのだ。真白が、真白の人間の心の部分が、疱瘡神の力を抑え込んでいたのだ。
わい等は偉い勘違いしていた・・・かもしれへん。
あのまま真白に術が命中してたら、とんでもないことになっていた可能性がある。
それに、まだ人間の意識があるのなら・・・。
『真白は・・・人に戻れる』
と颯馬は言っていたじゃないか。
彼らは互いに思い合っている。
そして、その心根を見抜いたからこそ、綾音は、なんの力もないただの小娘のくせに、自分の命も顧みず、疱瘡神に飛びかかっていったのだ。
誰もが恐れる、病の神に体当たり・・・って・・・。
そんなん・・・カッコよすぎるやろ!?
そんな根性見せられたら、わいも、やるしかないやろ?
俺は蛇之麁正を両手で逆手に持ち、そのまま渾身の力で大地に突き立てた。
「北方黒帝 王水縷縷 星辰 溶々にして 霜天に散ず
歳刑神 地より至りて 北門を閉じよ」
権能示せや
「蛇之麁正!」
ぼこり!と、突きつけた先の地面から水晶の結晶が突き出し、水晶の列が一気に疱瘡神まで走り伸びていく。
「があああっ!!」
大地から突き出した水晶は疱瘡神の足にまとわりつき、そこから伸びてその身体全体を覆い始める。
俺は剣に更に呪力を込めた。水晶が一段と大きく膨れ上がる。その様は疱瘡神の身体が水晶で凍りついていくかのようだった。
方針転換や!
封印・・・したるさかい・・・
「やめろおおおお!!!」
しかし、封印が完成する寸前、あらぬところから叫び声が聞こえた。
「颯馬さん!」
瀬良が声を上げる。颯馬が、瀬良を振り切って疱瘡神に向かって走っていた。
術を破る気か!?
無茶や!
そもそもが周囲に人がいないと発動できないほどの大呪だ。近づけば巻き込まれかねない。それに、今からでは、たとえ俺自身であっても、術を止めたり威力をそらすことは出来ない。