第54章 捲土重来(けんどちょうらい)
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クソ、ここまで来たのに・・・。陰陽寮の奴ら、俺達が逃げるところまで読んでいたってことか・・・。
あたりを見渡す。突然、地面から生えてきた結界壁はかなり頑強そうで、ちょっとやそっとでは破れそうにない。おそらく、お館様が言うところの、陰陽寮の陰陽師が使う『四神クラス』と言われている結界だろう。しかも、形状や雰囲気から察するに、その中でも最硬を誇る『土』の術式だろうと思われた。
少なくとも、俺やシラクモの神宝の力でこじ開けられるものじゃない。
いったい、どうしたら・・・。
親父は連れてきてしまったが、あの様子では意地でも品々物之比礼を使うことはしないだろう。役に立たないなら、ここに打ち捨てていってもいいくらいだ。
あとは・・・。
俺はぐったりしたまま俺に抱えられている真白を見た。真白の姿はもとの美しい人間の姿に戻っている。しかし、これは俺が彼女の体に触れ、足玉の神力を注ぎ込み続けているからに過ぎない。手を離せば再びあの醜い姿に戻ってしまう。
このままここでじっとしていればあとから来る陰陽師たちに捕まってしまう。
戦ったとしても、先程の衝突で明らかになったように、あの男陰陽師の妙な剣や、神狐の妖力を前にすれば俺達では敵わない。
万事・・・窮す・・・か?
こうなったら・・・。
ちらと下を見ると、いい具合に山の木々が開けているスペースがある。
「おい!シラクモ、あそこに降りろ」
俺が示すと、その意図がすぐにわかったのか、シラクモが軽く頷く。手掌で虫たちを操り降下を始める。
戦う・・・しかない。
そして、そうと決まれば、奴らが来るまでの短い時間でできるだけの準備をする必要がある。奴らの主要戦力はおそらく男陰陽師と神狐だ。女の内の一人は結界を張ったりしていたが、さほど強い力を有しているわけではないし、もう一人に関しては、あの神狐が力を使うための憑坐や使役者なのかもしれないが、戦闘力はほぼゼロに等しい。
ただ、戦闘力ゼロの女の方については、さっき狙ったとき、狐が猛然と反撃してきてしまい、攻略に失敗している。だとしたら、もう一人の女陰陽師を狙うか・・・、いや、いっそうのこと・・・。
「シラクモ、罠を張れ」