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天狐あやかし秘譚

第54章 捲土重来(けんどちょうらい)


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【捲土重来】前に敗れたものが、勢いを取り戻し巻き返してくること。
土煙を上げて怒涛の勢いで反撃にきちゃうぞ、みたいな。
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「土御門様!奴らが!!」
ものすごい数の昆虫たちがうねりを上げて飛び交う中、私達はとてもじゃないけど目を開けることができなかった。やっと周囲の状況を窺うことができたのは、羽音が過ぎ去って、少し経った頃だった。

そして、目を開けられたときにはすでに、颯馬と呼ばれた男性と、彼から『シラクモ』と呼ばれた白髪の若い男、名越鉄研・・・そして、疱瘡神に変貌した真白さんは、虫たちに『乗って』空高く舞い上がり、山の方に飛び去っていた。

「天狐はん、綾音はん、アレ、追っかけるで!」
土御門が剣を鞘に納め、走り出す。

え?!でも、もうあんなに遠くに行ってるのに!

ダリなら追いつけるかもしれない、でも、土御門や瀬良は走って追いかける気のようだ。私も慌てて後を追う。

「お・・・追いつけるんですか!?」
私は、日頃の運動不足が祟り、すでに息が上がっている。とてもじゃないけど追いつける気がしない。

「・・・綾音はん・・・陰陽寮を舐めたらあかんで?」
にやりと笑う土御門に気を取られ、足がもつれて転びそうになる。そんな私をふわっと後ろからダリが抱え込んでくれる。当然、今は狐神モードで、そもそも、彼は浮遊している。

「結界だ・・・」
抱きかかえられて、『うわ!』とか思ってしまっている私の耳元でダリが言った。その言葉で虫たちに乗って飛んでいる彼らの方に目をやる。

ざああああ!

山の頂上あたりを境に、淡いオレンジの壁が山の尾根沿いに走っていた。その揺らぐ光の壁は、美しくすらあり、まるで地面から天に向かってオーロラが生えているようだった。そして、よく見ると、虫たちに乗った颯馬たちは、その壁に遮られて前に進めないでいるようだ。

「へっへっへ・・・ええ仕事すんな!大鹿島!!」

浮遊しているダリのスピードも大したものだが、それに走ってついてくる土御門と瀬良の脚力も半端ではない。陰陽寮の戦闘部署『祓衆』の精鋭というだけのことはある。

「さあ!・・・追いつめたで!それじゃいっちょ、第二ラウンドといこうじゃないかい!」

土御門がぺろりと唇を舐めて嬉しそうに笑った。
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