第52章 愛多憎生(あいたぞうせい)
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【愛多憎生】あまりに愛されすぎると、憎しみを産んでしまう。
偏った愛は、遺恨を孕んじゃう・・・みたいな。
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代々、この家の女は美人と決まっていた。
そして、この家を継ぐのは、その女たちだった。
男は、ある年になると家を出される。分家になることもない。文字通り『追い出される』のだ。そして、女が当主となり、婿を取り、子を産む。
子作りは女が産まれるまで繰り返される。そして、この数百年、少なくともこの名越の家が生じてからは一度たりとも、女児が生まれなかったことはなかったのである。
母が俺を産んだのは22だと言っていた。現代の日本では若すぎるほど若い出産であるといえる。その理由は、何が何でも女児を産む必要がある、からだった。必要とされたのは女児だけであり、この家で男児の出産は『失敗』以外の何物もなかった。
俺が生まれた後も、両親は毎日のように子作りに励んだに違いない。それでもなかなか子ができなかったので相当焦ったと思われた。そして、やっと、母が27のときに妹の真白が生まれた。
真白は名越の家の習い通り、美しく育っていった。黒くつややかな髪、白く抜けるような肌色、整った顔立ちとスラリと長い手足。肌はきめ細かく、その手はしっとりとして滑らかだった。
5歳まで一人っ子として育った俺は、真白が生まれて初めて、自分が差別をされていたことに気付いた。両親、特に母親の態度は俺に向けるものと真白に向けるもので明確に違うのである。
この家に、俺は必要とされていない。
そう、強く思った。
母も、祖母も、真白ばかりをかまった。それでも、婿養子だった父や祖父は俺にも平等に愛情をという気持ちを持ってくれてはいたようだったが、なにせ、発言力は母や祖母の方が強い。いきおい、彼女らが見ているときには、父たちも真白の方に注目をせざるを得なかった。
よく覚えているのは、真白が7歳の誕生日を迎えたときだった。親類縁者、村の人総出で賑やかなパーティを開き、真白はまるでお姫様のような扱いだった。きらびやかなドレスを着せられ、舞台の真ん中に据えられていた。その中で、俺は末席に座らされ、一応は正装ということでそこそこの服を着せられてはいたが、たいそう惨めな思いをした。