第2章 禍福糾纆(かふくきゅうぼく)
☆☆☆
え?どストライクのイケメンなら嬉しいんじゃないかって?
そうですね、さっき、あえて説明しなかった2つのパーツの説明を加えるとしましょう。
頭には、狐の耳が、
そして、フッさりした狐の尻尾が、背中の向こうにゆらゆらと揺れているんです。
そう、目の前にいるのは、人間ではない。妖怪、厭魅、あやかしの類だったのです。
目を疑いましたが、何度目を擦っても消えません。それにこんな真っ昼間に、こんなにはっきりと現れていて、『見間違い』なんてこともないでしょう。
ああ・・・私は頭がおかしくなったのでしょうか?それとも、本当にあやかしに魅入られてしまったのでしょうか?
あんな願いをしたばかりに?嘘でしょ?
神様・・・お願い、キャンセル・・・効きませんか?
「し、失礼しまーす」
どうやらお願いのキャンセルが効きそうにないので、自主的に離反を試みた。回れ右をして、ダッシュする。ところが、一の鳥居を抜け、石段を転がるように降り、二の鳥居を抜けたその先に・・・
「な、なんでー!!!」
「おう、主、早かったな」
ダリが座っている賽銭箱の目の前に戻ってきてしまった。
もう一度・・・・!
やはり戻ってくる。
ええーい!もう一度!!
またまた、戻ってきてしまう。
はあ、はあ・・ぜえ、ぜえ・・・
さすがに息が切れた。
もう、走れない・・・。
疲れ果てた私は、ヘナヘナと賽銭箱の前に座り込んでしまう。
「なんじゃ、もうしまいか?しっかし、随分、生きの良いおなごじゃな・・・」
ぴょんと、ダリが賽銭箱から飛び降りた。全く音がしない。ふわりとまるで重さを感じさせないように着地する。
やっぱり人間じゃないよー。えーん。
お尻をぺたんとつけて座り込んでいる私に合わせるようにダリが少しかがむ。顎をクイッと上げ、顔を近づけてくる。私にとって初めての「イケメン顎クイ」が妖怪の手でいともたやすく消費されてしまった。
近くで見ると、なおさらイケメン・・・。
って、いや、違うでしょ!私!!
だが、その眼に見つめられると緊張からか、全く動けなくなった。
「ふむ・・・造作は悪くないな」
しげしげと私の顔を見る。ふわっと伽羅のような香りが鼻をつく。
間近で見ると、まつげも長く、白い肌に赤い唇が妙にセクシーだった。