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天狐あやかし秘譚

第47章 病入膏肓(びょうにゅうこうこう)


☆☆☆
村に着くと、とりあえず三人は目についた村人を捕まえて、『あるテロ組織が危険物を持ち込んだ恐れがある』と偽り、先月の末に怪しい人間を見なかったかと聞いて回ってみた。本当なら地元警察の手を借りたいところなのだが、事情が事情だけにそれは難しい。なので、三人は自分らの身分を東京警視庁の刑事であると偽って調査していた。もちろん、警視庁の名を借りることは、宮内庁から警察庁を経て許可を受けていた。

しかし、収穫はなかった。
数時間かけて30人程度の村人に聞いたが、一切よそ者は見ていない、というのだ。こういった田舎の村の常として、よそ者がくればすぐに分かるはずである。県外ナンバーの車が止まっているだけで110番通報が来るくらいだ。それが『知らない』というのだから、本当に知らないのだろうと推察できた。

冬の日は短い。あっという間に日が暮れてきた。

「しゃあない。今日は、どこかに泊めてもらおう。」

一応、地元県警を通じて村長の家には調査協力を仰いであった。とりあえず村長の家に行き、今夜の宿を借りることにしよう。

「ここがこの村の村長である、名越さんの家です」
手帳と門柱を見比べて確認しつつ、設楽が言った。もう大分日が暮れて、あたりが暗くなり始めている。早くしないと、田舎の人は寝てしまうかもしれない。

「すいませーん」
声を掛けると女中さんと思しき30代くらいの女性が出てきた。事情を説明すると、中に通してくれることになった。

名越家は昔からの家柄らしく、屋敷もそれなりに大きいものだった。門から玄関までそれなりの距離のアプローチがある。屋敷はもとは平屋だったのだろうが一部が二階建てに改装されているようだった。土御門が振り仰ぐと、その二階の窓にちらりと人影がよぎるのが見えた。

ん?

目を凝らすと、白いワンピースを着た14〜5歳くらいの目鼻立ちの整った女の子だった。髪の毛の漆黒さと肌の白さ、ワンピースの白さがコントラストをなしており、ハッとするような美貌の持ち主だった。

「土御門様?」

その美貌に見惚れて立ち止まってしまっていたらしい。先導する女中から大分引き離されてしまった。瀬良に促され、慌てて後を追う。
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