第44章 真実一路(しんじついちろ)
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目が覚めると、青と黒の沈む病室にいた。右腕には点滴がつけられているようで、針が刺さっているところがジクジク痛んだ。それ以外にも、身体中があちこち痛んでいるし、自分の体とは思えないほど重たかった。
ふと、足元の方に目をやると窓があった。そこから月明かりが差している。
青色の正体は、この月光だったようだ。
ここはどこだろう?
何が・・・あったのだろう?
ああ・・・そう言えば、私は、いつものように環が轢かれてしまった交差点に行っていて、そこで・・・妙な男の子に話しかけられて。
その男の子が、まるで環が生きているみたいに話してて・・・それで、それで・・・。
考えると、頭がツキンと痛んだ。
環を思い出したことで、あの日の出来事が鮮烈に脳内に溢れ出してくる。
キキキー!と軽ワゴン車が急ブレーキをかける音。
ゴン、と鈍い音とビシャアという何かが割れるような音。
耳についた音とともに、次々と嫌な記憶が蘇る。
ゴムが溶けたような匂いと、鉄臭い匂いが混ざった、吐き気を催すような嫌な臭気が立ち込める。人々が集まって来て、ガヤガヤと飛び交う言葉の意味はほとんど取れなかった。
サイレンの音、喧騒、怒声、靴音・・・全てがなんだか遠くの世界で起こっているようだった。
環は?環はどうしたの?
何か、良くないことが起こった、ということだけは分かった。
そこからは、まるで夢の中のようだった。
何人もの人から話を聴かれた。話す、話す、話す。
たしかに目の前で見たこと、聞いたことを話した。でも、まるで実感がなかった。
ふわふわと、水の中から世界を見ているようだった。
あの日のことが、どうしても取り返しがつかないことだった、と分かったのは随分時間が経ってから、だった。そして、それが分かった時、私は、私の心は、狂ってしまった。
環・・・環!
なんで、私は手を伸ばして・・・環を引き戻さなかった?
なんで、あの時あと一歩先に進めなかった?
なんで、行くなと大きな声で叫ばなかった!?
私がちゃんとしてなかったから・・・私のせいで・・・私の・・・せいで・・・
何度も、何度でも溢れ出す悔恨。考えようとしなくても、あの日の光景が勝手に心に湧き上がってきてしまう。湧き上がるたび、私は叫んで、悶えて、死を希った。
私が・・・私が死んでいれば・・・。
