第43章 報恩謝徳(ほうおんしゃとく)
工作室にいる『しどういん』さんとやらに、大きめの白い紙をもらう。なんでもロハでもらえるというのは、なかなかに素晴らしい施設である。
「まずは、地面を茶色で描いて・・・。そして、お家をここに貼るっと。それから、塀を描いて猫ちゃんをここに立たせて・・・それから、樹は・・・」
環が言う通りに作ってやる。
この『ぷれぜんと』は環が言うには、あの交差点に立っている女にやるのだという。
「あの女は主のなんなのだ?」
ペタペタと糊でもって折り紙を紙に貼りながら問うてみた。そう言えば、関係を聞いていなかった。あの辻に立つ怪異と、この者の関係は一体何なのだろうか?
「あの人、私のママなんだ・・・」
「主の母君か・・・でも、あの者は・・・」
「分かってる・・・。本当は、クリスマスにプレゼント渡すはずだったんだけど、あんな事があって・・・。だから、諦めていたんだ・・・。だけど、芝三郎が来てくれたから、もしかしたらクリスマスに間に合うかもしれない。」
「あんなこと・・・?」
「うん・・・事故にあっちゃって・・・。私のせい・・・なんだけどね」
元気な環がしゅんと下を向いてしまったので、拙者は慌てて話題をそらす。
「く・・・くりすます・・・とはなんじゃ?」
「え?芝三郎、クリスマス知らないの?」
環が言うにはこの町で『くりすます』という祭が近くあるそうだ。その祭事にあっては家族や親しいものが互いに『ぷれぜんと』という贈答を行う風習があるという。その『ぷれぜんと』として、この折り紙を貼り付けた絵を母君に渡したい、という事だった。
「主の母はなぜ、あそこずっといるのだ?」
何か、心残りがあるのだろうか。
「私のせいなんだよ。私が悪いのに・・・。私のことをずっと、気にしている。だから、もういいよ、気にしなくていいよって・・・伝えてあげたいんだけど・・・」
そこまで話し終わったところで、大体の構図が出来上がった。まだ白いところがあるので、そこに色鉛筆やクレヨンで色を塗れば大方完成だろう。
へへ・・・と環が破顔した。
「ありがとう、芝三郎・・・。これでクリスマスまでにはお母さんに渡せるよ・・・」
それじゃあ残りの作業に、と思ったところで、施設内に鐘が鳴った。この鐘は部屋が閉まる合図である。