第5章 夢幻泡影(むげんほうよう)
☆☆☆
っ!!!
あまりの恐怖に、ガバっと体を引き起こす。肩で浅い息をした。
全身がガチガチに硬直し、額から、背中から汗をじっとりとかいている。
・・・夢?
ありありと覚えている。誰か・・・多分あの幽霊の女の子が、真っ黒い人影に殴られていた。母親?みたいな人が守っていたけど、最後のシーンでは、もういなかった。
そして、真っ赤に焼けた鉄の棒が私の目に・・・。
はあ・・・はあ・・・
胸が痛い。息が、うまくできない・・・。
怖すぎて、目を閉じることすらできない。
「綾音・・・」
いつの間にか狐神モードのダリが私の横にいた。ふわりと私の全身を包み込むように抱きしめてくる。
「何か・・・来たな?」
ダリが周囲を見回しているのが気配でわかるが、私は目を見開いたまま身じろぎひとつとれない。まだ、心臓が痛いほど激しく打っている。
「あの・・・女の子だった・・・」
かろうじて、これだけ言えたが、やはりうまくは喋れない。
さっきの夢で殴られていた子は、あの公園で会った幽霊だった。そして、最後に熱く灼けた鉄の棒を目に押し付けられたのは・・・
「あの子の・・・最期に見た、光景・・・?」
あの時点で鉄の棒の先からは血が滴っていた。母親と思しき人はいなかった。
なぜいなかったのかは、推して知るべしである。
キヨカ・・・って言っていた。
「ダリ・・・。あの子・・・殺されたんだ」
今更ながらに、身体が震えだす。手足がすっと冷たくなり、心臓に針が刺さったように痛い。
頭の芯がジンジンと痺れた。また、心のなかに黒い男の像が浮かぶ。
そう、あの光景、後悔、恐怖、怒り、慟哭・・・
「殺された・・・死んだ・・・やめ・・だめ・・だって、お母さん・・・いや・・・ごめんなさい、ごめんなさい、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ・・・」
目を灼かれ、叫びながら、彼女が感じたあらゆる感情が一気に押し寄せてくる。
目を見開く。心臓が高鳴り、胃の腑が逆流しそうになる。
ダリが抱きしめる腕の力を強め、私の名を呼ぶ。その声が遠い。遠くて全く届かない。私の中の感情の奔流は止まらない。
いつしか私は絶叫していた。