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天狐あやかし秘譚

第37章 愛別離苦(あいべつりく)


顔がすすで汚れ、本気の狐神モード時に独特の、平安貴族が着る狩衣のような服もあちこちが裂けていた。

妖力が・・・尽きかけているんだ。

「ダリ!」
たまらずその名を呼ぶ。一応こちらをチラと見て、笑っては見せているが、やはりいつもの様子とは違う。
ダリの妖力は強大だが、決して無尽蔵ではない。使えばその力は減るのだ。そして、その回復には・・・、わ・・・私が必要・・・みたいだ。

かといって、今この場でエッチなんか出来ないし。
先程は「エッチする約束」で妖力が回復したみたいだけど、それが二度も通用するとは思えない。でも、このままじゃあ、宝生前さんが真名を聞き出してここに来る前にダリがやられちゃう・・・。

「がああ・・・ぐるるああがあうああ」

獣の叫びを上げ、ホシガリ様が槍を振りかざし、ダリに迫ってくる。ダリは一歩ステップバックし、その攻撃をいなすと、くるりと反転し、その勢いのままホシガリ様の後頭部に槍を叩きつける。

ザシュ!

ホシガリ様の頭部がきれいに吹き飛ぶが、あっという間に切断面の肉がウネウネと蠢き、切られた頭部が復活していく。

やっぱりキリが無い!
宝生前さん!早く!!!

祈るような気持ちで周囲を見渡した時、私の目に信じがたいものが映った。

「ホシガリ様ぁああ!」

圭介だ。いや、おそらく圭介だろう、何かだ。
それは、身長が2メートル近く、ほぼ全裸の身体が黒く染まり、発達した筋肉がギチギチときしみを上げているかのようだった。目は赤く爛々と輝き、髪の毛が逆立つその様子は、昔話に聞く『鬼』そのものだった。

そして、その右手に何かをズルズルと引きずっていた。
あれは・・・。

「宝生前さん!」

圭介は、ボロ雑巾のようになった見るも無惨な宝生前の首を無造作につかみ、そのままズルズルと引きずっていたのだ。そして、宝生前の腹のあたりにはじっとりと血がにじみ出ている。かろうじて息はしているのだろうが、生命の危険が迫っているのは明らかだった。

まずい・・・。縛り上げたはずの圭介は、更なる力を神宝から引き出し、その戒めを破り、かつ、おそらく真名を聞き出し、こちらに向かっていた宝生前を襲ったのだ。

「ホシガリ様!全て、殺せ!!ここにいる奴ら、皆殺しにしろ!!」
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