• テキストサイズ

天狐あやかし秘譚

第35章 窮鳥入懐(きゅうちょうにゅうかい)


「ちょっと待ってください。何をしても死なず、どんなものでも出すことができ、ある程度能力が落ちるとしても、神宝によって身体を強化することすらできるモノを・・・、いくら本質は人間だからといって、おいそれと野に放つわけには行かない・・・。予想がつきにくすぎる」

宝生前が反対する。
そう言われればそうなんだけど・・・。

でも、私にはどうしても彼女が悪いことをするとは思えない。

「じゃあ・・・かつて浮内の主が彼女にかけた呪を解くことは?」
それを解いて、その後領巾の呪いを解いたりは出来ないものだろうか?しかし、宝生前は首をふる。

「浮内の呪を解くためには、綾音さんの話を聞いた限りでは、ホシガリ様の『真名』が必要なのだと思います。綾音さんは、ホシガリ様と一体になっている時、自分の名を思い出せなかった、そうですよね?」
私はうなずいた。そう、徹頭徹尾、誰も彼女の名を呼ばなかったし、彼女も自分が誰なのかを覚えていなかった。
「それが呪の中核だと思います。浮内の主は、ホシガリ様の名を縛ることで行動を抑制しているのだと思います。」

名を奪って支配する・・・なんだか『千と千尋の神隠し』みたいだ。

「あの話は日本古来の真名の考え方をベースにしていますからね。真名はその人の真の名前であり、その人のすべてをコントロールするためのパスワードみたいなものだと理解されていました。なので、昔の人は真名の他に『仮名』を使うことを勧めていました。まあ、とにかく、ホシガリ様の真名を知らなければ呪を解くことは出来ないでしょう。」
宝生前の大学の講義のような説明が続く。

「多分、圭介は・・・その真名とやらを知っていると思います。以前に聞いたことがあります。浮内の家の長子だけが、ホシガリ様を操れる・・・と。その時は意味がわかりませんでしたが、今の話を総合すると、真名を知っているからコントロールできる・・・ということじゃないかと」
この草介さんの言葉に宝生前が飛びつく。
「それはありえます。だとしたら、なんとかして圭介から真名を聞き出せば・・・。」
どういうわけか宝生前がニヤニヤしている。「いや、そんな暇は・・・」「でも、背に腹は・・・」等と言いながらニヤけている様子は、いつもの彼と違っていて、ちょっと不気味だった。何、考えているの?
/ 475ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp