第33章 往古来今(おうこらいこん)
「この領巾は神宝が故に、強い力を持つ選ばれたもののみが使えるのです。ちょうど、貴女様のような、美しく、強いものだけです。そして、一度身につければ、その生命が尽きるまでその身から引き離すことができなくなる・・・これはお含みいただきたい」
女が息を呑む様子が分かる。そっと覗くと、男性の顔のみが分かる。どこか、圭介を思わせるような怜悧で冷たい印象のある男だった。
「もちろん、我々も見返りを求めます。これは取引です。よくお考えください。ただし、この領巾を用いれば、貴女の望みを叶えることは・・・」
「そなたの望みは?」
女の声に余裕がない。おそらく、気持ちは既に受け入れる方向なのだろう。男の方もそれがわかっているのか、鷹揚に構えている。
「何・・・こちらの求めるものは、やすきこと。契(ちぎり)をなしたい。あなたが生きている限り、その領巾の力で一年に一度のみ、浮内の家のために用をなしていただければよいのです」
契を・・・?
女は囁くように声を漏らす。心が揺れている様子が手に取るように分かる。
「分かった・・・契を受け入れよう」
一瞬、男の唇がとても嫌な感じに歪んだ、ように見えた。
「では・・・契を交わしましょう」
すううっと幕を下ろすように世界が暗闇に支配される。男が女の背に何かを刻んでいる。女は痛みに耐え、それでも、その目は彼方を見ていた。
世界が暗転する。また、別の時空に私は飛ばされていった。