第33章 往古来今(おうこらいこん)
あたり一面から声がする。その声は木霊し、響き合い、何度も何度も繰り返される怨嗟の叫びとなる。その大音量の叫び声に世界はゆらぎ、景色がひび割れ、粉々に砕けた。
何、何!今度は何よ!!
ひび割れた空間が、私の周囲でたちまちにして別の形に再構成される。
今度は・・・どこか立派なお屋敷の中だ。長者と言われるような人はこういうところに住んでいるのかもしれない。目の前の襖の向こうはいくつかの蝋燭が燭台に立てられていて、薄ぼんやりと明るくなっている。外の様子は分からないが、この暗さからいって夜なのだろう。
先程の場面より、更に底冷えするような寒さになっているところを見ると、真冬に近くなっているのかもしれない。私は自分の体を手でこすりながら、寒さに震えていた。
襖の向こう、誰かがいるようだった。
声が聞こえる。男の人が一人・・・?それから、先程の女の声・・・、海子の姉の声のようだった。
男の人が海子の姉を説得しているように聞こえる。
「この領巾(ひれ)は、当家の家宝。神宝と言い伝えられています。願いを叶える力を持つものです」
「そのように都合の良いものであれば、そなたが使えばよいではないか」
はは・・・と男が薄く笑う。