第33章 往古来今(おうこらいこん)
☆☆☆
は!
唐突に私は意識を取り戻した。
え?ここ・・・どこ?
私、確か、ホシガリ様が草介さんを連れ戻そうとしてたから、助けなきゃって思って、割って入って・・・それから・・・そう、そうだ!何かが作った黒い光に飲み込まれたんだ・・・。
じゃあ、ここは黒い光の中?
立ち上がって手足がきちんと動くかを確認する。
それから身体中をチェック。服装は、あの奇妙な家に入ったときと同じ、変わっていない。怪我もしていない。特に、異常を感じることはなかった。
次に周囲の確認。
どうやら、夜の森にいるようだった。りーん、りーんと虫の鳴く声が聞こえる。遠くに月影が見えた。
先ほど登ってきた山道に印象が近い、気もする。
一瞬、部屋の中から外に放り出されたのかとも思ったが、そう決めつけるのは早計だ。今までの経験からすると、ここがこの世ではないことは十分に考えられる。
あの不死身の妖怪・・・ホシガリ様が作った異界である可能性が高い。
そうはいっても、周囲を伺ってみると、あのホシガリ様がいる感じはしないので、とりあえず、私は歩いてみることにした。
道らしきものを下っていくと、明かりが見えた。近づくと、えらく古い作りの家にたどり着く。藁葺き屋根の家だ。
やっぱり、ここは、異界なんだ。
以前飲まれた異界で私は平安時代の寝殿造りの建物を見た。あの時は、ダリが作った異界だったが、そこに女怪となりかけた河西佳苗が干渉して、私とダリの記憶をもとにした世界が作られていた。
今回はあのホシガリ様が作った異界。だとしたら、彼女の記憶が反映されているのだろうか?
明かりが入っているということは、人がいるということかもしれない。
そっと、中の様子をうかがってみる。
「清延殿は、今度、都へ行き、侍となると言うていたぞ。あのような若者が跡取りになってくれればなあ・・・」
男性の声・・・?お酒でも飲んでいるのだろうか、随分機嫌が良さそうだ。
「あんたら二人のうち、どっちかがあんな見事な婿をもらってくれれば安泰なんですけどねえ」
こちらは女性だ。どうやら、先程の男の人は父親、こちらの女性は母親のようだった。