第32章 毛骨悚然(もうこつしょうぜん)
やっと・・・終わったの?
だが、ダリが私の前から動こうとしない。
「かああえええせええええ!!!」
再生がまだ追いついていないのか、ホシガリ様がしゃがれた声を発した。
なんで!?あの火の中からも復活したというの?
ダリが地面を蹴って走り出す。右手に再び古槍を顕現させる。
私の目の前からダリが駆け出したので、視界がひらけ、ホシガリ様が目に入った。
ひっ!
思わず声を上げる。
ホシガリ様の全身の肌は焼けただれ、頭皮は半分ズルリと落ちていた。顔の右半分は肉が削げ落ち、眼球と歯根がむき出しになっている。
身体中から白い煙をあげながら、それが向かったのは・・・
草介さん!?
ホシガリ様は宝生前が介抱している草介さんに向かって突っ込んでいっていた。
鉤爪が光る手を草介さんに伸ばそうとする。
草介さんを取り戻そうとしている!?
ダメ!
私は思わず飛び出し、草介さんとホシガリ様の間に割って入った。
期せずして、この瞬間は、ダリ、ホシガリ様、私、草介さん、宝生前が一直線に並んでいた。
ダリが何かを叫びながら、槍を振り回す光景がスローモーションのように見えた。
ホシガリ様が、合わせた手のひらの間に『黒い光』としか言いようのない不思議なものを生み出す。
「いけない!」と宝生前が私の後ろで叫んだ。
ダリが槍を振り下ろし、ホシガリ様を縦に一刀両断する。
しかし、そのままそのホシガリ様は両手を広げ、中央に作り出した黒い光を一気に広げた。
「綾音ええ!!!」
ダリが叫ぶ。
私は切り裂かれるホシガリ様の向こうのダリに手を伸ばした。
でも、その刹那・・・
私の身体をホシガリ様が生み出した黒い光が包みこんだ。
「ダリ!!!」
手を伸ばすが、それは空を切る。
そして、そのまま、私は意識もろともホシガリ様の作り出した黒い光に取り込まれてしまった。
目の前の光景が闇に沈む中、ダリが最後に呼んだ私の名が、脳内に何度も何度も、リフレインする。
私の身体は、深く深く、何処か別の世界に吸い込まれていってしまった。