第30章 形影相弔(けいえいそうちょう)
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やってきました、松前荘!さすが、島名主が紹介した宿というだけのことはある。老舗旅館、という言葉がぴったりな非常に立派な佇まいだ。
玄関をくぐると、艶やかな和服姿の女将が迎えてくれる。どうやら圭介から話が通っているらしく、あっという間に部屋まで案内してくれた。
「お三人共、別々のお部屋をご用意しております。今夜は存分にお楽しみくださいな」
ニッコリと笑う女将は、30代前半くらいの色気のある女性だった。いいなあ、私もあんなふうに歳を重ねていきたいものだ。
私がうっとりと眺めるそばで、男連中二人は全く興味がなさそうだ。まあ、ダリが鼻の下伸ばしていたらムカつくところだが、宝生前も関心がないようだ。
まあ、彼は当たり前か・・・。
部屋は一人で使うには広すぎる和室であった。多分、私とダリは助手ということになっているので、一応赤の他人カウントでこうしてくれたのだろうけど、私としては別に一緒の部屋で良いんだけど・・・、とか思ったが、ぶるんと頭をふる。
いやいや、ほんの1ヶ月ちょい前くらいは、一緒の部屋にいることすら緊張していたのに、何、当然のように同じ部屋でと思ってるのよ・・・私ってば!
まあ、ほぼ毎日一緒のおふとんで寝ているので、今更なんですが・・・ね。
まあ良いか、なんかあったら(?)ダリの部屋に行けば良いんだし(!)。
そんなわけで、荷物を置いたら早速、食事の時間である。なんだかんだ言って、あまり昼食をとらないまま行動していたので、早めの夕食がありがたい。
「このあたりの海の幸をふんだんに使ってますのよ」
食事は部屋ではなく、食事会場が別に用意されていた。私達以外にこの時間に食事する客がいなかったらしく、結構な広さの座敷に膳がぽつんと3つ並んで置いてあった。
艶やか女将が料理の説明をしてくれる。
ちなみにダリは日本酒を、宝生前と私は烏龍茶をいただくことにした。お酒を飲んでも良いのだが、明日もあるので遠慮したのだ。
料理は、先付に菊の花をあしらった魚介の細造り、汁物、メインはコリコリとした食感のキジハタのお造りと伊勢海老の盛り合わせ、それから焼き物では鯛とサザエ、煮物では車麩と白身魚の炊合せなどだった。最後に出てきたのも鯛を丸ごと使った鯛めしだったので、魚介づくしの会席だった。
むちゃくちゃ美味しい!
