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天狐あやかし秘譚

第30章 形影相弔(けいえいそうちょう)


「秘儀、というのは日本各地にありますし、それ自体は珍しいことではないですね。特に氏神の祀り方、など、知れたらそれで一冊の本が書けてしまいます・・・興味はありますが、機会を待つことにしましょう。・・・機会は・・・ありそうですか?」
「はは・・・どうでしょうね。ずっと昔から秘密だったものですから。私一人の力では先生にお知らせすることなど出来そうにないです。学問の発展のためにもなんとかできると良いのでしょうね・・・」

この二人、気が合うようだ。随分マニアックな話をしだした。ただ、やはり儀式の主役である草介は今日それほど時間が取れないようだ。

「草介様・・・そろそろ、準備に戻りませんと」
強面のボディガードにせっつかれてしまう。

「おっと・・・済まないね、木島。つい、話し込んでしまった。」
「できれば、明日の午前中にもお話を伺いたいですなあ」
宝生前さん!食い下がりすぎでしょ!?
草介は頭をかいて困ったようなほほ笑みを浮かべる。
「明日の午前中は難しいでしょうね。むしろ、僕が輿入れをした後の方が・・・機会があるかも知れません」
「ほほう・・・それは楽しみですね」

「草介様!」

ほら・・・怒られた。
最後に宝生前と草介は固く握手を交わす。そのまま、草介さんは木島というボディガードに連れられ退出した。

「さあ・・・皆様のための宿の手配が完了したとのことです。こちらに地図がありますので迷うことはないと思いますが・・・。ご案内をつけますか?」
女中から地図をもらい、一瞥すると、宝生前が頷いた。
「いえ、大丈夫だと思います。散歩がてらゆっくり行こうと思いますから」
「お食事の手配を早めにしてもらっているようです。こちらは浮内の家が手配したものですので、『お振る舞い』とさせていただく、と当主は申しておりました。」

こうして私達は、浮内の家を後にし、紹介された『松前荘』という旅館を目指した。

女中によると、松前荘の食事は瀬戸内海の海の幸がたっぷりの特別コースだそうだ。それを聞いただけでよだれがたれそうになる。だって、だって!私カキフライも干しタコも食べてないもの!

私の頭の中はまだ見ぬ特別コースの妄想でいっぱいになっていた。
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