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天狐あやかし秘譚

第29章 異聞奇譚(いぶんきたん)


☆☆☆
「さあ!つきましたよ!調査!調査です!」

漁船から荷物をおろし、料金の支払いを終えると、宝生前が生き生きと歩き出そうとする。私の方は丘に立っているにもかかわらず、まだ身体がふらふらと揺れているのではないか思うほど船酔いしていた。

「ちょ・・・っとまって・・・宝生前さん・・・きゅ・・・休憩させてくらはい・・・」

足を引っ張ってる自覚はあります。でも、すぐ動けない・・・。ごめんなさい・・・。

あまりの気持ち悪さに、私は港に併設している待合でしゃがみ込んでしまう。
ああ・・・窓から男の人が『こいつなんなんだ』って目で見ているよ・・・。恥ずかしい。

よく見ると、どうやらこの辺の人は、外の人が珍しいようで、あちこちから視線を感じる。あっちからは双子かな?おんなじ顔した若い女性がじっとダリを見ていた。

あー・・・ダリはイケメンだからなあ・・・。

私のあまりのヘタレっぷりに、宝生前が『仕方ないですねえ』と、しばらく港近くの小さな旅館の食堂での休憩を許してくれた。先を急ぎたいだろうに、本当にごめんなさい。

昼時を大分過ぎていたので、店内は空いており、私の真っ青な顔を見て不憫だと思った女将は快く店内の座敷で横になることを許してくれた。

「あ・・・綾音さん?」

宝生前さんが横になっている私を見て眼を丸くしている。
え?何?どうしたの・・・、何か・・・変?

「・・・それいつもしているんですか?・・・膝枕?」

げ!しまった。ついいつものクセで自然とダリの膝に横たわってしまった。ダリもさも当たり前のように膝を貸し、私の頭を撫でていた。

ただ改めて問われると、これって確かにまずいかも。プライベートならともかく、一応仕事中だし・・・。

「ま・・・あの、私は良いんですが・・・仲、よろしいんですね。羨ましい・・・。」

はい・・・すいません。お恥ずかしい限り・・・。
意識しだすと途端に顔が赤くなる。だが、さりとてここで『ダリ、大丈夫だよ』と膝枕を解除するのもなんか・・・。結局、そのまま横にならせてもらうこととした。

ダリと宝生前は女将さんが出してくれたお茶とお茶請けの甘い煮豆のようなものをいただいていた。一応なにか注文しないと悪いと思ったのか、宝生前は更に干しタコの炙りと、牡蠣フライを注文していた。
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