第24章 拈華微笑(ねんげみしょう)
「例えば有名なところでは平安時代最強の怨霊と言われた菅原道真を神として祀って慰撫していますし、平将門も調伏ではなく、首塚を作って弔っています。祓い清める以外の方法もあるんです」
そう言われてみれば、私が清香ちゃんにやったのは、回向、ということになるんだろうか?ちらっと清香ちゃんを見る。美味しそうにケーキを頬張っている姿は幸せそうだ。
もし、あの女性も、こんなふうに笑えるなら・・・そうしてあげたい。
でも、具体的にはどうするんだろう?
「基本は説得です。多分、その『木霊』は彼が亡くなったことを理解できていない・・・。それを理解させること、それがポイントなんだと思います。ただ、途中で怨霊化する可能性もゼロではないです。人の姿を取ることができるほどの木霊です。力も相当だと思われます」
「その時は、我が祓えば良い」
ダリがこともなげに言うが、そうあっては欲しくない。誰も聞いていないからわからないかもしれないけど、彼女のあの切なげな声、『壊さないで』という必死の願い・・・。
やっぱり、なんとかしてあげたい・・・。
☆☆☆
そんなわけで、私とダリは綿貫亭に戻ってきた。ついでに、何かあったときにはご助力します、ということで瀬良も同行してくれる。
清香ちゃんと芝三郎はお庭で遊んでいてもらうことにした。
ダリが再び異界の扉を開く。
そして、またやってきた。あの、大きなけやきがある、『木霊』の世界。
「ここが、『木霊』の異界ですね・・・。おそらく、あの樹が本体の元の姿を模しているのでしょう」
たしかに、私がビジョンで視た樹・・・その中では『私』になっていたのだが・・・によく似ていた。
木霊はその樹の根本に座っていた。相変わらず二人には視えていないようなので、私がその姿を描写してみせた。
足を投げ出すように座っている。俯いて、長い髪が顔にかかって、どんな表情かはわからない。
「多分、先程の天狐様との小競り合いで力をかなり消耗したのだと思います。」
ダリが念の為と槍を取り出そうとしたが、私はそれを止めた。
多分、ダリの退魔の槍はあるだけで彼女を脅かす。先程もそうだった。あの槍が現れてから、木霊の動きが変わり、最後は動けなくなっていた。
瀬良とダリに目配せをし、私は慎重に彼女に近づく。