第20章 往事茫茫(おうじぼうぼう)
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「どういう・・・ことですか?」
土御門の言っている意味が分からなかった。なに?それ?どういうこと?
「だから、天狐はんが、鬼道っていうめっちゃ危ない地獄の入り口みたいなものから女怪が溢れんのを防ぐために、自分の身もろとも時空を固定してん。」
時空を固定って。
「何も動かない、動かれへん。自分も動けない代わり、鬼道も開くことがない。ついでに言えば、河西もあれ以上妖魅に落ちることもない。」
確かに、あいつは約束を守ったで・・・。
土御門は言う。え?嘘でしょ?ダリ・・・動けないって。
「事実上、自分を犠牲に鬼道を封印したっちゅーことや」
自分を犠牲にって、そんな・・・。
「な・・・んで?なんで!・・どうして・・・嘘・・・」
ふらふらと歩く。そのままとんと、土御門の身体に突き当たった。その体を拳で叩いた。
「嘘・・・嘘・・・」
犠牲?それってどういう・・・帰ってこないってこと?
叩く力が徐々に強くなる。が、土御門はなされるがままにしていた。
分かってるよ・・・分かってる。この人に当たったってしょうがないことなんだ。それに、さっきの話だと、ダリがこの人を助けたんだ。
なんでよ・・・どうしてよ・・・。確かに、帰ってきなさいって、約束してないけどさ。
そんなの、当たり前じゃない。勝手にいなくなるなんて、そんなのないよ・・・。
あまりにも突然のことに、思考がまとまらない。
土御門の身体を叩き続ける手をそっと瀬良が押さえた。その手に促されるように私は力を抜く。
「土御門様・・・」
瀬良が土御門を見る。
「とにかく・・・現状、あれが安定しているんは確かだ。だから、今のうちに、住民を避難させる。瀬良・・・手配を」
いつもは瀬良ちゃん、というのに、そう言わない。
それだけ、彼も真剣だということがわかる。
「かしこまりました、土御門様」
瀬良が本部がある部屋に駆けていった。
「綾音はん・・・」
頭がフワフワしてよく考えがまとまらないまま座っていた私に土御門が声をかけてきた。
「天狐はんが、最後に言っとったんや・・・『綾音を連れてこい』とさ。別に天狐はあっこで永遠に封じられとる気やないみたいや。あんたを連れてけばなんとかなるんやろ?」
なんで?私が行って、なにか役に立つの?