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天狐あやかし秘譚

第19章 進退両難(しんたいりょうなん)


「鬼道を開いたな・・・」
横で、ダリがポツリと言う。その言葉に土御門は目を見開く。
何?なんやて?お前、今なんて言うた!

冷や汗が、背中を伝う。

鬼道言うたら、地獄の蓋開いたようなもんやないか・・・。
放っとけば、あの穴からいくらでも怪異が湧いてくる。人が、対処できるレベルを超えている。

そうか、なんでこんなによーさん女怪がおったのか、やっとわかった。あの河西とかいう女、どういうわけか胎内に鬼道を宿してたんや。やから、無制限に仲間を呼び集め、殖やすことができたんや・・・。

確信が持てた・・・順序はともかく、こいつが『始まりの女怪』だ!

そして今、河西佳苗は胎内に納めていた鬼道を外に出し、開いたのだ。

このままじゃまずい!

「天狐!抑えるぞ!」
とにかく、開ききらない内に最大呪力で抑え込む!

将軍剣を顔の前に掲げるように構え、重心を落とし、身体を半身にする。霞の構えと呼ばれる構えだ。
「天地開闢 四神天帝を奉る 霊光、星辰、日形、月形、極みて退けよ
 東方青帝土公、南方赤帝土公、西方白帝土公、北方黒帝土公、赤門より再拝せよ」
将軍剣に光が集中する。

同時にダリが右手を伸ばし槍を召喚する。土御門が横目にチラと見る。あれが天狐の用いている武器。御九里から聞いてはいた。あれこそ、この日本開闢の際、伊邪那岐尊が天地を開くのに用いた、間違いなく世界で最強の破邪の槍。

ー天魔反戈(あまのかえしのほこ)

天狐も槍を中段に構え、呪言を奏上する。
「久方の 光清けし 月を読めやも
 常世たち せかるる岩に 天離かりせよ」 
槍の穂先から青い月明かりに似た光があふれ、周囲の空間を制圧していく。
 
土御門が最後の呪言を唱えた。
「霊光剣戟 急急如律令!」
将軍剣から光が一直線に暗い洞に向かって伸びる。

きゃははははは!
 きゃはははははは!

厭魅の狂った笑いが響く。呼応するように、暗闇の洞が大きく広がった。それは闇を孕み、まるで蠢動するかのように、妖気を溢れかえらせる。

「行け!」
土御門の放った光を纏い、ダリが槍を構えて突進する。土御門の術とダリの身体が一つとなり、闇の洞にぶつかっていった。最初は押され気味だったダリだったが、槍に力を込めると徐々に闇の塊を押し返し始めた。
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