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天狐あやかし秘譚

第3章 秋霜烈日(しゅうそうれつじつ)


☆☆☆
暗い森・・・。嗚呼、昔のことを思い出したな。

「なあ、坊主よ。貴様、この天狐を本気で封ずるつもりか?」

威嚇をしてみたけど、この糞坊主、ひとつも物言わぬ。
シャンと錫杖をひとつ鳴らすと、疾風のごとく突っ込んできた。

ああ・・・もう妖力がほとんど残っておらぬ。
これを躱したとしても、次でしまいじゃな・・・。

もう少し、隙があれば・・・この坊主の張った妙な結界を抜けられるものを。
山全体を結界に覆われている。すぐには逃げられない。坊主の気を逸らす何か、何かを・・・。

さあっと身体を霞にしてかろうじて坊主の突進攻撃を避けた。
今のが、最後の妖力じゃな・・・。

ああ・・・願わくば・・・もう一度お主に会いたかったぞ。
碧音(あおね)よ。

坊主が切り返し、また力を溜める。あいつがずっと唱えている真言のせいで、身体が重い・・・。

シャン!錫杖を地面に突き立て、再びこちらに向かって突進してくる。

ここまでか・・・

「お坊様!おやめください」
女が坊主と我の間に割って入ってきた。坊主が突き出した錫杖が女の腹に突き刺さる。

がは!

女・・・碧音は我の前で血を吐いた。
「碧!お前・・・」
「天狐様・・・」
視線が交わる。我は碧音を抱き上げる。しっかりしろ、碧!
口元から血が滴っている。妖力のない我では治癒を施すこともままならない。ただ、ただ抱きしめることしかできない。

坊主が錫杖から手を離し、たもとから独鈷を取り出す。とどめを刺そうという腹であろうが、今は貴様にかまっている暇はない。必死に碧に呼びかける。

死ぬな!碧!
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