第18章 暗雲低迷(あんうんていめい)
土御門が剣を下に向けた独特の構えを取る。地龍の構えに似ていると言われたことがあるが、これは我流だ。戦いの中で動きやすく、かつ、対応しやすいということで身につけてきた。
「行くで!」
ざっと走り出す。天狐はあまり当てにしていない。動かなかったらそれでいい。動けばラッキーだ。ただ、わいが想像している通りやったら、役立つんと違うかな?
群れをなす女怪の中心に走り込み、剣を切り上げるように一閃。次いで、ぐるっと体をねじり、横薙ぎにした。それだけの動きで数十体の女怪が一気に塵となって消えていく。
この剣そのものの退魔の力もさることながら、振る際に込めている霊力の効果も大きい。
『助の一位』、それが土御門加苅に与えられた位階であり、彼の強大な霊力を一番直接的に表している。
宮内庁陰陽寮には多くの術者が在籍している。一人前と認められると陰陽師の称号を冠する。そして、陰陽師の中でも特に霊力が強い者は『陰陽博士』と呼ばれる。その陰陽博士にだけ『位階』が与えられるのだ。
位階とは、「頭(かみ)、助(すけ)、丞(じょう)、属(ぞく)」の四階級と、「一位から四位」までの四位で成り立っている。頭(かみ)には位はないので、実質13の位階が存在する。
頭(かみ)は陰陽寮の長官であるので除外するとして、その下の位階で最も高いのが『助の一位』となる。
土御門に与えられているのは、この最強の位階であった。
「おらああ!」
怒号とともに剣を薙ぎ払うと、あっという間に女怪が四散し、道が拓ける。そこを進み、また溢れてきた女怪を薙ぎ払う。
「お前もやれや!」
土御門がダリに毒づくが、ダリは涼しい顔をしている。時折自分に襲いかかってくる女怪を片手で払い除けることはしても、積極的に周辺の女怪を祓おうとはしない。
手の内、見せへん気やな?
ま、ええわ。
土御門が女怪を祓い開いた道を進むということを繰り返して進むことおよそ10分。二人は一棟の高層マンションを目にしていた。
「見るからに、ここやな」
土御門が呟く。それもそのはず、そのマンションは壁にほぼびっしりと女怪がしがみつき、こちらに向かって牽制の叫びを上げていた。明らかに、この場所を守ろうとしている。