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天狐あやかし秘譚

第118章 焦眉之急(しゅうびのきゅう)


☆☆☆
「はあ・・・すごくいい演奏やったね・・・綾音」
「う・・・うん、そ、そうやね」

あの後、結局、もう一度術をかけたヒロトシさんに服を着てもらい、同じところでバイバイをすることになった。彼からしたら、一瞬、記憶が飛んで、気づいたら周囲が夕暮れに染まっていたと感じられたに違いない。

そんな工作をしていたら、結局私達がコンサート会場に戻れたのは、演奏終了間近だった。要するに、私はほとんど演奏を聞いてはいなかったのである。

なので笑って誤魔化すしかない。

「帰りはこっち?」
「あ、うん・・・そうしようかなっち」

どうしても渋谷方面に帰る気がしなくて、少し遠回りだけど代々木公園の方に向かうことにした。原宿を母に見せるのも悪くないかと思ったのもある。

お腹の中であからさまにしょぼくれている佐那の気配を感じる。

『佐那・・・ごめん・・・』
自分でも、あんなに反発しちゃうとは思わなかった。なんか、とてもとても大事なものが壊れてしまうような気がして、どうしても我慢できなかったのだ。

だから、ここは謝るしかなかった。
自分で言っておいて、土壇場で撤回したのだ。本当に申し訳ない。
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