第118章 焦眉之急(しゅうびのきゅう)
私のその気持が通じたのかもしれない。佐那がポツリと言った。
『いいえ・・・なんとなく、こうなるのではないかと思っておりました』
でも、実際の所、佐那の消滅の危機は去っていないのだ。母を守るため、というのはもちろんあるが、母や私をこれまで懸命に守ってくれたという佐那が消滅してしまうなどということはやっぱり許容できない。
『なんとか、他の妖力の補給方法を考える・・・よ』
そう言ってはみたものの、私としては全く宛はなかった。とりあえず、明日、出勤したときに陰陽寮の文書アーカイブを支配する暦部門、そこにいる優秀なキュレーターであるところの高森さんに聞いたらいい方法が分かるかもしれない。
『わたくし、綾音様に無理を言いました・・・こちらこそ、すいません』
そう言って、すん、と落ち込む彼女の気持ちも私に痛いほど伝わってくる。そうなのだ、ちょっとデリカシーがないと言うか、猪突猛進なところがあるが、佐那の行動原理は全て『人のため』なのだ。それが分かる分、申し訳なさに拍車が掛かる。
私は、そっとお腹に手を置いて、もう一度、彼女に心から謝った。
夕暮れの街。空は紅から藍色に染まろうとしていた。